近年、日本のインバウンド市場は急成長を遂げており、訪日外国人旅行者数はコロナ禍前の水準を超える勢いを見せています。
地方観光の需要が高まり、小規模な貸切バス会社にも大きなビジネスチャンスが生まれています。
そこで本記事では、インバウンド市場の最新動向を踏まえながら、小さな貸切バス会社が外国人観光客を取り込むための具体的な戦略について考えてみます。
訪日客のニーズを理解し、効果的なサービスとプロモーションを展開することで、新たな収益源を築きましょう!
HOW
- まずは、営業区域のインバウンド動向を知る
- 【集客1】地元の観光連盟などのインバウンド担当者に相談する
- 【集客2】海外向けランドオペレーターへ営業する
- 【集客3】海外の旅行会社へ営業する
- 【集客4】インバウンド向け募集型ツアーを企画する
貸切バス事業者が知っておくべき、インバウンド市場の動向
近年、訪日外国人旅行者の傾向として「個人旅行(FIT)」が増加しています。
かつて主流だった大規模な団体ツアーに比べ、個人や小グループで自由に旅を楽しむスタイルが好まれるようになっています。
しかし、悲観的に考える必要はありません。必ず、団体旅行のニーズは一定数残るからです。
個人化が進むインバウンド旅行
航空券や宿泊施設のオンライン予約が一般化し、個人旅行者が増加しています。特に欧米や東南アジアの旅行者は、自分たちで旅程を組み、公共交通機関を使いながら自由に観光するケースが増えています。
団体旅行のニーズは依然として存在
一方で、団体旅行のニーズは一定数残っています。特に、中国や台湾、タイなどの団体旅行は根強く、企業のインセンティブツアーや学校の教育旅行、富裕層向けの高級ツアーなどで貸切バスが活用されています。また、宗教巡礼やスポーツイベントの観戦ツアーなど、特定の目的を持った団体旅行では、移動手段として貸切バスが重宝されています。
このように、インバウンド市場では個人旅行が主流になりつつあるものの、団体旅行の需要も依然として存在します。貸切バス会社としては、個人旅行者向けの少人数グループツアーや、特定のニーズに応じた団体向けサービスを提供することで、新たなビジネスチャンスをつかむことができると考えられます。
知っておくべきこと
貸切バスの営業区域拡大措置
国土交通省では、訪日外国人旅行者の移動ニーズへの対応のため、安全に対する取組状況が優良な事業者が、通常の営業区域よりも広域的に貸切バスを提供できる特例措置を講じています。
対象事業者 | 公益社団法人日本バス協会が実施している貸切バス事業者安全性評価認定を受けた貸切バス事業者であって、法令遵守の点で問題のない事業者。 |
営業区域 | (イ) 営業所が所在する区域を管轄する運輸局の管轄区域を臨時営業区域とする。 (ロ) (イ)の他に営業所が所在する府県に隣接する道府県(国土交通省が公開している別資料に定めるものに限る。)を運輸局の管轄区域にかかわらず臨時営業区域とすることができる。 |
対象旅客 | 訪日外国人旅行者 |
認可期限 | 認可日から令和7年3月末日まで。 ※2025年2月20日現在 |
詳しくは、必ず公式サイトご確認ください。
参考サイト
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(国土交通省)「訪日外国人旅行者向け貸切バスの需給状況を踏まえた臨時営業区域の設定について 」特例措置 1年延長について | 一般社団法人日本旅行業協会
www.jata-net.or.jp
都市部から遠いエリアや国際空港のないエリアに営業所のあるバス会社には大きなメリットになります。
営業区域のインバウンド動向を知る
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インバウンド集客を成功させるためには、まず営業区域にどの国の観光客が訪れているのかを把握することが重要です。
例えば、タイ人観光客がほとんど来ていない地域でタイ人向けの集客を行っても、効果は期待できません。
小規模な貸切バス事業者の場合、基本的には「すでに訪れている国の観光客」をターゲットにするのが賢明です。
まずは市場を調査しよう
- 自社の営業区域にはどの国の観光客が多いのかを把握する
- 訪れている国の観光客の特徴を知る(団体旅行が多いのか、個人旅行が中心なのか)
この2点を押さえることで、ターゲットを明確にし、効果的な集客戦略を立てることができます。
営業区域のインバウンド状況が分からない場合
自社のエリアにどの国の観光客が来ているか分からない場合は、JNTOのサイトや地元の観光連盟の公開データ等を参考にしてください。
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日本政府観光局(JNTO) - Japan National Tourism Organization
日本政府観光局(JNTO)の公式ウェブサイトです。日本政府観光局(JNTO:Japan National Tourism Organization、正式名称:独⽴⾏政法⼈ 国際観光振興機構)は、訪⽇外 ...
www.jnto.go.jp
ターゲットが決まったら、その国の特徴を把握
ターゲットとする国が決まったら、その国の観光客がどのような旅行スタイルを好むのかを理解しましょう。詳しくは、以下の記事にまとめています。
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https://kankou-one.com/tokushu_inbound_tokucho/
kankou-one.com
【集客1】地元の観光連盟などのインバウンド担当者に相談する
小規模な貸切バス事業者がインバウンド集客に取り組む際、まず頼るべきは地元の観光協会や観光連盟です。多くの観光協会では、訪日外国人向けの誘客活動を行っており、有益な情報やサポートを提供してくれます。
もし地元の観光協会がインバウンド対応をしていなくても、営業エリア内の主要都市の観光協会で取り組んでいる可能性が高いため、インバウンド担当者に相談してみましょう。「外国人観光客を受け入れたい!」という熱意を伝えれば、親身にアドバイスをしてくれるはずです。
すぐに団体ツアーの紹介がもらえるわけではない
ただし、相談したからといってすぐにインバウンドの団体ツアーを斡旋してもらえるわけではありません。
長期的な視点で、地域のインバウンド誘客活動に積極的に参加し、観光協会の担当者さんやターゲット国の旅行会社と信頼関係を築いていくことが大切です。
特にインバウンド集客では、海外の旅行会社との関係構築がカギとなります。一朝一夕に成果が出るものではないため、地道な活動を積み重ねていきましょう。
インバウンドの団体ツアーがすでに充足している場合は?
貸切バスの供給がすでに多い地域では、旅行会社や外国人観光客にとって魅力的なオリジナルプランを提案する工夫が必要です。
【集客2】海外向けランドオペレーターへ営業する
海外向けのランドオペレーター(現地手配会社)と連携することも、インバウンド集客の有効な手段の一つです。
ランドオペレーターは、海外の旅行会社やツアーオペレーターとつながり、日本国内での交通・宿泊・観光手配を行っています。そのため、ランドオペレーターと関係を築くことで、海外からの団体ツアーなどの案件を獲得できる可能性が高まります。
ランドオペレーターとの取引を始めるには?
- 自社の営業エリアに強いランドオペレーターをリサーチ
大手だけでなく、地域密着型のランドオペレーターも視野に入れる。 - 問い合わせや訪問で直接営業をかける
自社の強み(安全性・快適性・特別プランなど)を明確に伝える。 - 試験的なツアーを提案する
自社の強み(安全性・快適性・特別プランなど)を明確に伝える。
ランドオペレーターは、すでに海外の旅行会社と強いネットワークを持っているため、うまく関係を構築できれば継続的な仕事につながる可能性が高いです。
最初の取引を得るまで時間がかかることもありますが、地道にアプローチを続けていくことが成功の鍵となります。
【集客3】海外の旅行会社へ営業する
海外の旅行会社へ直接営業を行うことも、インバウンド集客の有力な方法です。特に、日本への旅行を扱っている旅行会社とつながることで、団体ツアーや個人旅行(FIT)向けの送客を獲得できる可能性が高まります。
海外旅行会社との取引を始めるには?
- ターゲット国の旅行会社をリサーチ
自社の営業エリアに多く訪れている国の旅行会社を調べる。
現地の観光見本市やオンラインリストを活用して候補を探す。 - 商談でアプローチ
旅行会社に向けた提案資料(英語・中国語など)を準備する。
現地訪問やZoomなどのオンラインミーティングを活用し、直接提案する。 - 自社の強みを明確に伝える
安全性や快適性、特別なルートやプランなど、他社と差別化できるポイントを伝える。
既存の実績があれば紹介し、信頼を築く。
具体的なツアー提案やモデルコースを用意したり、ツアーに必要な各種手配を代わりに行ったりすることも旅行会社にとってメリットと感じてもらえる場合があります。(手配代行の場合は、旅行業法の違反に注意してください)
海外の旅行会社は集客力が強く、小規模のバス会社の場合、予約を受け切れない可能性もあります。
予約NGが続くと、旅行会社との信頼関係に響くので、そのあたりのバランスを見た上で営業活動を行いましょう。
【集客4】インバウンド向け募集型ツアーを企画する
貸切バスを活用し、インバウンド向けの募集型ツアー(個人旅行者向けのツアー)を企画することも、効果的な集客方法の一つです。 近年、団体旅行だけでなく、個人旅行(FIT)でも現地発着のツアーに参加するケースが増えています。特に、移動手段に不安のある訪日外国人にとって、バスツアーは魅力的な選択肢となります。
募集型ツアーを成功させるポイント
- ターゲット層を明確にする
どの国の旅行者向けか?(例:英語圏、中国圏、東南アジアなど)
どのようなニーズがあるか?(例:観光名所巡り、体験型ツアー、グルメツアー) - 訪日外国人に人気のスポットを組み込む
営業エリア内で外国人に人気の観光地をルートに含める。
文化体験(和食づくり、茶道、温泉など)を取り入れると、より魅力的に。 - 予約しやすい仕組みを整える
英語・中国語などの多言語対応の予約サイトを用意する。
旅行予約プラットフォーム(Klook、GetYourGuide など)に掲載する。
訪日外国人向けのホテルや観光案内所と提携し、ツアーを紹介してもらう。 - 少人数ツアーや特別プランも検討
近年、少人数向けのプレミアムツアーの需要が増えている。例えば、貸切バスを活用した「プライベートツアー」や「テーマ別ツアー(食文化体験、夜景ツアーなど)」も魅力的。
訪日外国人にとって魅力的なツアーを企画し、適切な販売チャネルを確保することで、新たな集客のチャンスが広がります。 まずは、小規模でも実施可能なツアーから始め、徐々に認知度を高めていくことが重要です。
東京では、はとバスさんが行っているような方法です。
この方法は難易度が高いので、集客4としました。
インバウンド集客を始める前に。
インバウンド集客を行う前に、自社の体制を整える必要があります。
特に実施しておく必要があるものを紹介します。
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【対策】外国語対応
インバウンド集客を成功させるためには、外国語対応の整備が不可欠です。どんなに魅力的なサービスを提供していても、言葉の壁があると外国人旅行者に伝わりにくく、利用をためらわれてしまいます。まずは基本的な対応から整えていきましょう。
1. 乗務員の基本的な対応を考える
- すべてのスタッフが流暢な外国語を話せる必要はありませんが、簡単な英語や中国語のフレーズを覚えておくと安心です。
- 例えば、「次の目的地は○○です」「出発時間は○○時です」など、基本的な案内を覚えておくだけでもスムーズな対応につながります。
- 翻訳アプリを活用するのも一つの方法です。リアルタイム翻訳ができるアプリを活用すれば、簡単なやり取りが可能になります。
2. 多言語の案内を用意する
- バスの利用方法や注意点などを、英語・中国語・韓国語などの多言語で記載した案内を用意しましょう。
- 紙のパンフレットを作成するだけでなく、QRコードでウェブサイトにアクセスできるようにすると、さらに便利です。
- 主要な観光スポットや施設の情報も、多言語で簡単に説明できるよう準備しておくと、利用者の満足度が向上します。
3. 予約・問い合わせの外国語対応を整える
- 外国人向けの予約窓口をわかりやすくする。電話対応が難しい場合は、メールやチャットやFAXで対応できる仕組みを整備すると良い。
- Google 翻訳やチャットボットを活用して、外国語での問い合わせに対応できる体制をつくる。
- SNS(Facebook, Instagram, WeChat,LINEなど)を活用し、外国人旅行者とのコミュニケーションを取りやすくするのも有効。
LINEは日本だけでなく、団体のニーズがある台湾やタイ、インドネシアなどでも利用されています。
個人観光客ではなく、旅行会社やランドオペレーターと取引をする場合は、手配者や添乗員は日本語が話せる方が多いので、そこまで心配はないかもしれません。
しかし、お客様は日本語が話せない方が多いので、できる対策は行っておきましょう。
【対策】ホームページ等のオンラインの充実化
インバウンド集客を始める前に、ホームページやSNSなどのオンライン環境を整えることも重要です。
旅行会社や個人の訪日外国人の多くは、旅行前にインターネットで情報を集めるため、わかりやすく魅力的な発信をしておいた方が見つけてもらうきっかけになります。
まず、ホームページは多言語対応を行い、料金や予約方法を明確に記載しましょう。英語や中国語などの翻訳を用意し、シンプルで直感的に使えるデザインを心掛けることが大切です。
また、予約や問い合わせの手続きもスムーズにする必要があります。
個人旅行を対象にする場合には、外国人が利用しやすい予約フォームや決済方法(クレジットカードやAlipayなど)を整備することで、予約のハードルを下げられます。
ホームページ制作は、観光ONEでもお受けしております。詳しくは、こちら。
挑戦が地域の成長に!インバウンド市場で新しい未来を創る
インバウンド集客は小規模貸切バス事業にとって、非常に大きな成長のチャンスです。
地域の観光資源を活用し、適切なターゲットに向けた戦略を実行することで、新たな顧客層を開拓できます。
あなたのビジネスに合ったインバウンド集客の方法を、一緒に考えていきましょう。