観光行政

令和8年度「観光庁予算」、何が変わる?徹底解剖レポート

2026年1月1日

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2025年12月26日、政府は令和8年度(2026年度)の予算案を閣議決定。
これにあわせて、観光庁の予算も正式に発表されました。

「国が今、重点的に取り組もうとしている政策は何なのか?」
その答えは、予算の中身に表れます。

この記事では、令和8年度の観光庁予算を紐解きながら、昨年度との比較、重点分野の変化、そして注目すべき事業の動きを徹底解剖していきます。

概要

令和8年度の観光庁関連予算の額は、「1383億4500万円」が計上されました。
この額は、昨年度の「530億3300万円」から、約2.6倍となりました。

このうち1300億円は、7月より引き上げ予定の国際観光旅客税(通称:出国税)が充当されます。
東日本大震災からの「復興枠」を含めると、1390億1000万円となります。

出国税の増税に伴い、文化庁なども130%前後の予算増加となりました。

オーバーツーリズムは日本の観光業の大きな課題です。
これまでは「地方誘客による分散」が中心施策でしたが、令和8年度予算では、「未然防止・抑制」や「受入環境整備」にも重点を置き、対策がより具体化・多角化された点が大きな変化であると感じています。

出国税に関する記事

新しく設定された予算

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地方誘客の推進による需要分散
ウポポイを通じた海外へのアイヌ文化の発信とインバウンド需要の創出 1億円
ボトルネック解消に向けた空港機能の抜本的強化事業 28億8,300万円
天候トラブル時の空港への旅客滞留・混雑防止対策事業 10億円
空港アクセス鉄道の整備・機能強化への支援 5億2,500万円
パーク&レールライドによる観光地の混雑緩和事業 8億7,500万円
ローカル鉄道観光資源活用促進事業 46億円
観光産業の活性化
日米交流関係強化を通じた地方誘客促進等事業 3億円
万博レガシー事業 2億円5,000万円
GREEN×EXPO2027を契機としたインバウンド促進事業 2億円5,700万円
廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業 10億円
能登半島地震からの復興に向けた観光再生支援事業 5億円
その他
地域の観光振興の効果測定 1億円1,400万円
日本人旅行者の安全・安心な海外旅行環境の整備 174億円9,000万円

オーバーツーリズム問題の解消に向けた予算が多い印象です。
詳しく見ていきましょう!

ウポポイを通じた海外へのアイヌ文化の発信とインバウンド需要の創出(1億円)

ウポポイとは、令和2年に開業した北海道白老郡白老町にある国立の複合施設の総称です。施設の管理は、札幌市に拠点を置く公益財団法人アイヌ民族文化財団が担っています。
文化庁・観光庁・北海道が連携し、こうした施設等を通してアイヌの人々が民族としての誇りを持って生活できる社会の実現を目指しています。
令和8年度からは、発信とインバウンド需要の創出に予算が追加されました。

アイヌ文化については、改めて解説記事を作りたいと思います。

ボトルネック解消に向けた空港機能の抜本的強化事業(28億8,300万円)

外国人観光客の増加に伴うオーバーツーリズムは、公共交通にも大きな影響を与えています。
なかでも空港は地方誘客の要となる重要な拠点であり、混雑を避け、快適な滞在環境を提供するためにも、生産性の向上が求められます。

今年度は、グランドハンドリング(航空機の到着から出発までの地上業務)における業務効率化や生産性の向上に加え、空港ターミナルビルの機能強化、空港アクセスの改善などに28億円を超える大きな予算が追加されました。

事業の対象者は、空港ビル会社、空港会社、本邦航空会社、地方公共団体などです。

天候トラブル時の空港への旅客滞留・混雑防止対策事業(10億円)

こちらも、前述の空港環境整備と同様の取り組みですが、本事業は「天候トラブル」への対応にフォーカスしています。
具体的には、自動運転型の空港用プラウ除雪車や、1人で航空機の融雪作業が可能なワンマンデアイシングカー(特殊車両)を導入し、効率的な除雪・融雪作業を支援することで、悪天候時の空港機能の維持を図るものです。

空港アクセス鉄道の整備・機能強化への支援(5億2,500万円)

こちらも大規模な整備事業です。
空港アクセス鉄道の機能強化・整備を加速させるため、鉄道事業者などが実施する計画や調査の段階から、国が支援を行います。
具体的には、金利負担の軽減によって大胆な資金調達を後押しし、事業の早期実現を目指します。
特に首都圏を中心に、主要な国際空港と市街地をつなぐ空港アクセス路線の整備を推進していくものです。

費用を一部補助するものに合わせて、銀行融資の利子を補助するものもあります。少し複雑なので、しっかりチェックしておきましょう。

パーク&レールライドによる観光地の混雑緩和事業(8億7,500万円)

「パーク&レールライド」とは、観光地へのマイカー流入を抑えるための施策で、鎌倉市などで導入されている取り組みです。
観光地の手前に駐車場を設け、そこから公共交通機関への乗り換えを促す仕組みです。

パーク&レールライド用駐車場の整備や、企画乗車券などの利用促進にかかる費用に加えて、列車の混雑を防ぐため、駅の改修や車両の増結・増便などの対応も含めた予算となっています。

鎌倉市の一部のパーク&レールライドは、2025年9月に終了が発表されました。
理由は、「江ノ電の車内混雑」です。車の混雑を避けると列車内の混雑が増える。
ここのバランスは非常に難しいですが、当予算において新たに挑戦される事業者はともに解消できる工夫がないと事業採択されにくいと思います。

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ローカル鉄道観光資源活用促進事業(46億円)

地方鉄道は、地方誘客を実現するうえで欠かせない存在です。
移動手段としての役割はもちろん、鉄道自体が観光コンテンツとして魅力的であることも求められています。

これまでも「地域観光魅力向上事業」の一環で支援されてきましたが、今年度は「ローカル鉄道」に特化した予算が新設され、46億円が充てられる予定です。
国が本気で地方鉄道の活性化に取り組もうとしていることが伝わってきます。

私自身もローカル鉄道のインバウンド誘致に携わっており、その重要性を実感しています。
地域の資源を生かし、地域にお金を流しつつ、ローカル鉄道会社の利益も確保するスキームを考えていきたいですね。

ローカル鉄道活用事例

日米交流関係強化を通じた地方誘客促進等事業(3億円)

来年2027年は米国建国250周年となります。
令和7年10月28日に日米首脳会談が実施され、高市総理とトランプ米大統領は、来年の米国建国250周年を共に祝い、日米の友好・交流関係を一層発展させていくことを確認しました。

この新予算は、日米の交流関係の更なる強化に向けて、米国から我が国の地方部への誘客を促進するとともに、米国建国250周年による機運も活用しつつ、日米の交流拡大を図るためのものです。

米国からの観光を促進するイベントへの出展等、両国間の相互理解や関係強化を促進する事業が対象です。

万博レガシー事業(2億円5,000万円)

万博レガシーとは、直訳すると「万博遺産」のことです。
2025年4月から開催された大阪・関西万博では、外国人156万人を含む約2,558万人が来場しました。

ここでいうレガシーとは、跡地やミャクミャクといった有形的な遺産だけではありません。
万博をきっかけに得られた、世界から日本への関心、来場者の体験・学び、出展者や参加各国間の新たなネットワーク等の全てが重要なレガシー(遺産)であり、万博を通じて形成された関西地域の連携体制も生かしながら、これらのレガシーを観光分野においても継続活用することにより、旅行者の地域周遊・長期滞在といった観光需要の地方分散につなげるための取組を推進することを目指した事業です。

観光からは話が離れますが、かの有名な「明治ブルガリアヨーグルト」は1970年の大阪万博で「ブルガリア館」を訪れた社員が味を忘れられずに再現したものです。
国際交流には大きな可能性があります。

GREEN×EXPO2027を契機としたインバウンド促進事業(2億円5,700万円)

GREEN×EXPO2027は、神奈川県横浜市にある旧上瀬谷通信施設(米軍施設跡地)で開催される気候変動や自然再興への貢献を目指した博覧会です。

クールジャパンでも取り上げられている日本の文化に「日本庭園」や「盆栽」があります。
GREEN×EXPO2027を契機に、こうした日本文化を広く知ってもらうための観光コンテンツ造成を目指すものです。

来場目標は1,500万人と非常に大規模なイベントです。
前回、1970年に開催された花の万博では、大阪の開催で2,000万人以上が来場しました。

廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業(10億円)

かつての団体旅行が減少し、個人旅行が増加。
この変化は、多くの地方の温泉街を打撃しました。
こうした温泉街では、「個人旅行に合わせて再生したい!」と願っても、廃旅館等の大きく堅牢な建物の解体・減築に要する費用が新たな宿泊事業に比して過大となってしまうために、再生が進められないケースが多くあります。

この事業では、こうした温泉街の中心地などで廃旅館等を撤去・減築し、新たな旅館の再生を行う事業に対する支援を目的にし、旅館等の再生を契機とした「まちのにぎわい再生」「地方誘客の促進」を図ることを目指しています。

能登半島地震からの復興に向けた観光再生支援事業等のまちづくり支援事業(5億円)

2024年1月の能登半島地震から2年が経過しました。
能登地域の復興にはまだまだ大きな支援が必要です。観光振興も同じです。

災害からの更なる復旧に当たって、経営高度化に向けた計画策定、人材の確保に向けた取組、復旧後の誘客促進を図るためのコンテンツ造成等を支援する事業です。

地域の観光振興の効果測定(1億円1,400万円)

外国人観光客の約7割が三大都市圏に集中しており、地方誘客は大きな課題となっています。
そこで、これまでのコンテンツ・宿泊施設・観光人材の量と質、交通アクセス等の各要素が、旅行者の誘客にどのように影響を及ぼしているかを分析し、観光施策の有効性を明確化することを目指す予算として追加とされました。

日本人旅行者の安全・安心な海外旅行環境の整備(174億9,000万円)

世界各地で自然災害、テロ・戦争、事件・事故等が発生する中、日本人旅行者の安全・安心な海外旅行環境を整備し、海外における治安、災害への不安等を払拭することを通じて、アウトバウンドの回復に貢献する。

外務省「たびレジ」や緊急時の情報収集・利活用、連絡手段の確保、邦人退避の対応、医務官・在外公館料理人も関与し、衛生や食事の質を確保した避難所の運営などに活用される予定です。

昨年度より増えた予算

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インバウンドの受入れと住民生活の質の確保との両立
オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の受入環境整備の促進 100億円
地域一体となった持続可能な観光地域づくりの推進 18億7,900万円
円滑な出入国の環境整備 127億7,700万円
円滑な通関等の環境整備 70億5,100万円
地方誘客の推進による需要分散
戦略的な訪日プロモーションの実施 136億2,700万円
DMO総合支援事業 20億円
地域の観光資源充実のための環境整備推進事業 40億円
文化資源を活用した全国各地のインバウンド創出・拡大 223億8,800万円
国立公園等のインバウンドに向けた環境整備 178億1,100万円
空港におけるFAST TRAVELの推進 40億円
クルーズ等訪日旅客の受入促進事業 10億円
観光産業の活性化
双方向交流の拡大に向けた環境整備 5億円
MICE誘致・開催促進事業 12億9,700万円
通訳ガイド制度の充実・強化 1億900万円
多様な食習慣や文化的慣習を持つ訪日外国人旅行者の受入環境整備に向けたモデル事業 1億円
健全な民泊サービスの普及 7億4,300万円
その他
観光統計の整備 6億9,300万円
大手休憩所(仮称)の整備 57億7,500万円

以下に、昨年度よりも特に増えた事業を紹介いたします!

オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の受入環境整備の促進

オーバーツーリズムは観光業界にとって早急に解決が必要な大きな課題となっています。
地域住民の生活との両立を守らなければなりません。

令和8年度予算では、昨年度比の約8倍の予算にあたり100億円が計上されています。
地方公共団体や地域づくり法人(DMO)が中心となった現在の課題・未来の課題の両方の解決に向けた取り組みが支援されます。

今回からは特に、短期的な発想ではなく、「中長期的な課題解決視点」が重視されています。

国立公園等のインバウンドに向けた環境整備

環境省が2016年から取り組んでいるのが「国立公園満喫プロジェクト」です。
観光でも、国立公園を目的に訪れる外国人観光客は、長期滞在につながりやすいと言われています。

「滞在体験魅力向上・感動体験創出」や「国立公園の魅力発信」などに活用できる事業の予算が今回から大幅に増加しました。
この予算には、近年問題になっているクマ対策を含む「利用者安全・安心対策の強化」にも活用できます。

文化資源を活用した全国各地のインバウンド創出・拡大

訪日外国人観光客の約6~7割は、日本の豊かな文化を求めて来日しています。
そこで、地域固有の文化資源の磨き上げ、文化財の公開促進などの訪日旅行客が体験できる魅力的な取組を全国に拡充旅行先の多様化・分散化・長期滞在化・リピート化を推進に予算が追加されています。

クルーズ等訪日旅客の受入促進事業

国は観光立国に向けて、クルーズ船に力を入れることを1つの戦略にしています。
日本において、港湾周辺等における観光は地方誘客・消費拡大という面で大きなポテンシャルを有しており、これらの観光資源を活用し、新たな消費の開拓や魅力向上を図ることが必要だと考えられています。

令和8年度からは約5倍の10億円規模の予算になっており、より取り組みが本格化されることが期待されています。

双方向交流の拡大に向けた環境整備

更なるインバウンド増加や地方誘客に向けて航空路線の維持・拡大が必要です。
さらなる地方空港を活用した相互交流の促進のために、地方空港発着の定期便やチャーター便の誘致なども含まれています。

また、双方向交流の拡大には、日本人が海外へいく「アウトバウンド」の需要拡大も不可欠です。
ワーキングホリデーを通じた双方向交流の促進や海外教育旅行を通じた若者の国際交流の促進も当事業に含まれます。

なぜ地方空港の活用が必要なのか?についても触れています

健全な民泊サービスの普及

近年、住宅宿泊事業法の届出等の適正な手続きを経ていない違法な民泊(いわゆる無届民泊)が問題となっています。
しかし、仲介業者は各物件の適法性を確認する手段が限られており、違法な民泊サービスへの迅速な対応が困難という現状があります。

そこで、民泊制度運営システムと仲介サイトとのデータ連携を可能とし、届出番号や住所等の自動照合を行う仕組みを構築することで、仲介サイトから無届民泊を迅速かつ確実に削除できる環境を整備する事業が作られました。
令和8年度は、昨年度の約7倍の予算が計上されており、無届民泊対策がより本格化していくことが予想されます。


昨年度と変わらない、または減った予算

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地方誘客の推進による需要分散
質の高い消費と投資を呼び込むためのデジタルノマド誘客促進事業 1億円
観光産業の活性化
国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業 13億円
地域観光資源の多言語解説整備促進事業 5億円
その他
地域の観光振興の効果測定 1億円1,400万円

減少=力を入れない というわけではない点は理解が必要です。
昨年度の事業実績をもとに算出しているためです。

考察

参考:令和8年度観光庁関係予算決定概要

※観光ONEでは、情報の提供を目的としており、公平性を心がけて執筆しています。
特定の国、地域、組織、政策、または個人を擁護したり、批判したりする意図は一切ありません。
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  • この記事を書いた人

上野 颯

観光イベント企画・添乗員

愛知県一宮市生まれ、岐阜市育ち
中学生で最年少の観光案内人としてデビュー。
旅行会社やIT企業での経験を経て、公立高校商業科(観光ビジネス)の講師や自治体への観光戦略の立案、ローカル鉄道の列車企画・ツアーの企画など、多岐にわたる活動を展開しています。

「観光の未来をもっと、おもしろく」をテーマに、観光業界で働く皆さまに〝若者目線〟も入れながら役立つ情報を発信しています。


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