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【世界が注目する村】「白馬村」に観光客が殺到した成功要因と課題についてまとめてみました!

2025年1月2日

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長野県の北西部に位置する白馬村。
白馬村は、2023年に国連世界観光機関(UNWTO)の「ベスト・ツーリズム・ビレッジ」に初選出され、その豊かな自然環境と持続可能な観光地としての取り組みが国際的に高く評価されています。
また、2024年の大東建託による「住みたい続けたい街ランキング」では、前年までランク外だったにもかかわらず10位に急上昇するなど、住民にとっても魅力的な環境づくりが進められています。

観光業界に携わる方であればもちろん、そうでない方も、「白馬村」の注目度の高さを実感している方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、訪日外国人のみならず日本人観光客にも人気の白馬村の成功要因と課題について、白馬村が公開している膨大な観光戦略や研究レポートをもとに、分かりやすくまとめていきます。

白馬村の凄さは、「行政」と「民間」それぞれが結果を出している点です。
白馬村は世界的な観光立村として注目されています。

長野県・白馬村の状況

地価伸び率・全国4位
参考:国土交通省 都道府県地価調査
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2024年に国土交通省が発表した「地価調査」によると、長野県白馬村の商業地の地価が前年から約30%上昇しました。
この上昇率は、半導体工場の需要で注目される熊本県菊陽町や北海道千歳市に次ぎ、全国で4位となる数字です。
外国人を含む観光客の回復により、ホテルやコンドミニアム用地の需要が引き続き旺盛であり、地価の大幅な上昇が続いています。一方で、地価上昇に伴う売却先の選定や地域住民への影響といった課題も指摘されています。

詳細は後述します

2024年観光客数 過去20年最高の270万人超え
参考:白馬村役場「観光統計」
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白馬村役場が発表した観光統計によると、スキー・登山・一般観光を含む2024年の観光客総数は、過去20年で最高の271万人となりました。

スキー場 夏の来場客数が冬の”2倍”に。
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若者のスキー離れや暖冬の影響により、多くのスキー場が経営の厳しさに直面しています。
こうした状況の中、長野県白馬村にあるスキー場では“夏季営業”を強化し、その結果、夏の来場者数が冬を上回るまでに成長しました。

「⽩⾺岩岳マウンテンリゾート」は、2024年8月11日(日)から8月16日(金)までのお盆休み期間中の来場者が約23,200人となり、過去最高を記録したと発表しました。2020年以降、夏の利用者が冬の利用者の2倍になるなど、季節性を問わないオールシーズンで楽しめる取り組みが注目されています。

UN Tourismベスト・ツーリズム・ビレッジに認定

観光を通じた文化遺産の促進や保全、持続可能な開発に取り組む地域を認定する*UN Tourism(国連世界観光機関)が2021年に開始した「ベスト・ツーリズム・ビレッジ」プロジェクトに、2023年に初めて選出されました。
観光客の増加を目的とするのではなく、持続可能な観光開発の推進にも力を入れています。

観光庁指定の「先駆的DMO」に認定
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一般社団法人白馬村観光局は、観光庁が推進する「先駆的DMO」に選定されました。これは、国内のDMO(観光地域づくり法人)の中でも特に優れた戦略や成果を上げ、観光を通じた地域の持続的な発展に貢献している組織に与えられる評価です。
「先駆的DMO」に選ばれることは、単なる観光振興にとどまらず、地域の経済成長や文化・自然資源の保全を両立させる高度な取り組みが観光庁に認められた証でもあります。

長野県・白馬村の魅力とは?

この章では、観光戦略を理解するための基盤となる、白馬村が有する観光資源を紹介いたします。

長野冬季オリンピックの開催地でもある日本スキーの聖地

白馬八方尾根スキー場

栂池高原スキー場

白馬村は、1998年に開催された長野冬季オリンピックのメイン会場としても知られ、日本スキーの聖地とも言われています。
四季折々の美しい自然景観を楽しめる一方、冬は国内屈指のパウダースノーが魅力です。

白馬村内には、初心者向けのコースから上級者向けの挑戦的なコースまで、多彩なスキー場が点在しており、スキーやスノーボードを楽しむ方々にとって理想的な場所です。
特に、白馬八方尾根スキー場は、日本最大級の規模を誇り、プロスキーヤーも絶賛する上質なパウダースノーが魅力となっています。豊富な雪質に加え、絶景を堪能しながら滑れるのもこのスキー場ならではの魅力で、世界中から訪れるスキーヤーやボーダーに愛されています。

白馬村の代表的なスキー場

  • 白馬八方尾根スキー場(日本最大級のスキー場、絶景ゲレンデ)
  • 白馬五竜&Hakuba47ウィンタースポーツパーク(初心者から上級者まで楽しめる)
  • 栂池高原スキー場(家族向けのゲレンデが豊富)
  • 白馬岩岳マウンテンリゾート(夏は絶景テラスやマウンテンバイクが人気)
  • 鹿島槍スキー場(北アルプスを望むスキー場)
まるで天空の散歩道を歩いているような北アルプス白馬連峰

白馬大雪渓

白馬八方池

白馬村はスキーだけでなく、白馬連峰の雄大な自然を楽しむスポットも豊富です。
特に、白馬岳や栂池高原などの登山・ハイキングコースは、四季折々の絶景を堪能できる人気のエリアです。
栂池高原や白馬岩岳では、ゴンドラを利用して山頂からの壮大なパノラマを楽しめるほか、ハイキングやトレッキングも気軽に楽しめます。
さらに、白馬村内には温泉地も点在しており、登山後に自然に囲まれた中で癒しのひとときを過ごせます。

白馬村のアウトドアスポット

  • 白馬大雪渓(日本三大雪渓のひとつ、夏でも雪が残る登山ルート)
  • 八方池(標高2,060mに位置する絶景の池、初心者でも登山可能)
  • 栂池自然園(湿原が広がるトレッキングコース)
  • 白馬鑓温泉(登山者向けの秘湯、絶景露天風呂)
  • 姫川源流自然探勝園(清流が美しいハイキングスポット)
北アルプスを望む白馬の山村集落

大出の吊り橋

白馬村はスキーやアウトドアだけでなく、農村や集落の魅力も豊富です。
青鬼集落は重要伝統的建造物群保存地区に指定され、美しい棚田の風景が広がり、歴史的な魅力も感じられます。

白馬村が公開している観光戦略でも、農村景観や集落景観の魅力向上に力を入れることが明記してあります。

白馬村のアウトドアスポット

  • 大出の吊橋(白馬三山を背景にした絶景フォトスポット)
  • 青鬼集落(重要伝統的建造物群保存地区、棚田の風景が美しい)
  • 白馬三枝美術館(地元作家の作品やアート展示)
  • 白馬ジャンプ競技場(1998年長野五輪の舞台、実際にジャンプ台を見学可能)
夏でも楽しめるアウトドア・アクティビティ(夏・秋向け)

スキーシーズン以外でも楽しめるアウトドアスポット充実しています。
マウンテンバイクやカヌー、ラフティング、熱気球体験などが特に人気です。

白馬村のアウトドアスポット

  • 白馬岩岳マウンテンリゾート(グリーンシーズン)(絶景テラスやアクティビティが人気)
  • Hakuba47 マウンテンスポーツパーク(マウンテンバイク、カヌーなど)
  • ラフティング(姫川)(夏の定番アクティビティ)
  • 熱気球体験(白馬の大自然を空から楽しめる)

観光客減少からの挑戦 その戦略とは?

世界水準のオールシーズンリゾートを目指し、着実に実績を重ねる長野県・白馬村。
観光は白馬村の基幹産業の一つであり、多くの住民が宿泊業などの観光業に携わっています。
しかし当初は、観光客の減少に加え、人口減少による廃業の影響も重なり、地域全体に危機感が広がっていました。

白馬村の観光客数は2000年をピークに減少
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白馬村は、バブル経済の時期に国内のスキー客で賑わい、多くのペンションや宿泊施設が建設されました。しかし、スキーを楽しむ人々の減少に伴い、観光客も減少し、2000年を境に衰退が進行しました。
1998年の長野オリンピックでは競技会場として注目を集めましたが、その後も観光客の減少は続きました。加えて、温暖化による雪不足や2014年の長野県神城断層地震など、観光業にとって厳しい状況が続きます。

追い討ちをかける少子高齢化
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観光客の減少に加え、白馬村では人口の減少も顕著に進行しています。
2005年には約9,500人だった人口が減少に転じ、2021年には約8,500人にまで減少しました。
少子高齢化の影響により、若年層の流出が続いており、宿泊業や観光関連の人材確保がますます困難になっています。

さらに、スキー場や宿泊施設の老朽化が進行し、ゴンドラの改修などには多額の費用が必要とされています。
地域の衰退を防ぐためには観光収入の向上が急務ですが、観光客の減少と人口の減少が影響し、地域経済の基盤は徐々に弱体化しています。

外国人観光客からの絶大な人気を獲得
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こうした状況を打開するため、白馬村は2005年頃(平成17年頃)から地域が一体となってオーストラリアでの観光誘致活動を本格化させました。
長野オリンピックでの実績やパウダースノーの魅力を訴求した結果、白馬はオーストラリア人スキー客に人気のエリアとなり、訪日客が増加。
特に冬季はオーストラリアや台湾などの外国人観光客が大半を占めるようになり、観光業の活性化につながりました。

白馬岩岳マウンテンリゾートを中心に「夏」の集客を強化。国内観光客も増加

冬季のスキー客への依存を減らすため、白馬村は「夏」の観光誘致にも取り組みを開始。
2017年以降、白馬岩岳マウンテンリゾートを中心に展望テラスやマウンテンバイクコースの整備を進めました。

その結果、夏季の来場者数は2016年比で大幅に増加し、国内観光客の回復にも繋がりました。
こうした取り組みにより、白馬村は四季を通じて楽しめるリゾート地への転換を強化していくことになります。

白馬岩岳マウンテンリゾートでは、総額21億円を投資し、38年ぶりに老朽化したゴンドラの改修しました。
白馬村は、オールシーズン楽しめる山岳リゾートへと歩みを進めています。

白馬村が新たに抱える「課題」

オールシーズン楽しめる観光地として注目されている白馬村ですが、新たな課題も発生してきています。
この章では、現在の白馬村が抱える課題について解説いたします。

地価の上昇が地域住民に与える影響
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白馬村では、急激な地価の上昇が進んでいます。
地価の上昇は、地域への投資が活発になっている証拠であり、観光地としてさらに発展することが期待されています。

しかし、その一方で地域住民には厳しい影響も出ています。土地の買収が進むことで、家主から退去を求められるケースが増え、家賃や固定資産税の上昇も地域住民にとって大きな負担となっています。

また、白馬村は「民宿発祥の地」としても知られ、家族経営の民宿が多く存在します。これらの民宿の相続においても、相続税の負担が増していることが問題となっています。
もともと白馬に愛着を持って住んでいた住民にとって、地価上昇によるこれらの負担は非常に厳しいものとなっています。

地元住民の転出は防ぎたいという想いもあります。

外資系投資の受け入れに関する課題
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近年、土地を購入してホテルなどを建設したいという外資系企業が増えています。
外資系企業が進出することによって、新たな顧客層の獲得や多様な宿泊施設の選択肢が増えるなど、観光地としての魅力が高まるというメリットがあります。

しかし、地域に利益が十分に還元されない可能性や、他の観光地が注目されるとすぐに撤退されてしまう懸念もあります。このような観点から、持続可能な地域経営を実現するために、外資系企業の進出が最適な選択かどうかについては、議論が続いています。

国内の企業が多数進出してくれることが理想です。
直近では、国内で宿泊施設を手掛ける「温故知新」が運営する、高級分譲ホテルがオープンしました。

飲食店の不足
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ホテルの新設が相次ぐ一方で、白馬村では「夕食を楽しめる飲食店の不足」が大きな課題として浮き彫りになっています。

国内の宿泊客は「2食付きプラン」を好む傾向がある一方、海外からの旅行者、特に連泊の旅行者は「朝食のみのプラン」を選ぶことが多く、ホテル内のレストランではなく、現地の多様な外食を楽しもうと夕食に外出することが増えています。しかし、外食を楽しめる飲食店の数が不足しており、この結果「外食難民」の問題が発生しています。

白馬村では、キッチンカーの誘致や、ウィンターシーズン限定で新規飲食店を出店する取り組みが進められていますが、依然として課題は残っています。

域内交通の充実化

白馬村では、スキー場や各種活動拠点がそれぞれ独立しているため、拠点内の移動だけでなく、拠点間の移動手段の充実が求められています。
特に、外国人観光客にとっては、夕食を宿泊施設ではなく外で楽しむことが一般的です。
このため、夕方から夜にかけて宿泊エリアと飲食エリアを結ぶ交通手段(モビリティ)の整備は、以前から重要な課題とされています。

雨天時の受け入れ体制
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白馬村では、スキーや登山、アウトドアなどの自然を楽しむアクティビティが豊富ですが、これらは天候に左右されやすいです。
そのため、雨天時の受け入れ体制に課題がありました。

現在では、雨天でも楽しめる施設として「HakuBounce(トランポリンパーク)」や「とんぼ玉づくり(白馬ガラス工房GAKU、kirakira glass)」などが開業し、受け入れ体制の強化が進められています。

これからの白馬村

白馬村は自然を中心とした観光地ですが、気候変動による雪不足などの影響を受けやすい地域でもあります。その課題に立ち向かうため、白馬村は「気候変動への対策実験場」として、持続可能な未来を追求しています。遊びながら実験し、新しい形の持続可能な村づくりを進める中で、白馬村が世界が注目する「サステナブルな観光地」となる日も、そう遠くないかもしれません。

白馬村の観光についての関連書籍

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  • この記事を書いた人

上野 颯

添乗員・観光イベントプランナー

1998年 愛知県一宮市生まれ、岐阜市育ち
中学生で最年少の観光案内人としてデビュー。
旅行会社やIT企業での経験を経て、公立高校商業科(観光ビジネス)の講師や観光戦略の立案、ローカル鉄道の列車企画・バスツアーの企画など、多岐にわたる活動を展開しています。

「観光の未来をもっと、おもしろく」をテーマに、このサイトでは観光業界で働く皆さまに役立つ情報を発信しています。

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