観光行政

国際観光旅客税とは?内容と課題について超分かりやすく解説します!

2025年2月16日

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近年、日本を訪れる外国人観光客は急増し、2024年には過去最高の3,600万人を突破しました。政府は2030年までに6,000万人の誘致を目指しており、インバウンド観光は日本経済の重要な柱となっています。

しかし、観光客の増加だけでは十分ではありません。訪日外国人にいかに多く消費してもらい、その利益を国内へ還元するかが大きな課題となっています。特定の観光地に負担が集中する「オーバーツーリズム」や、観光収益が地域経済に行き渡らない問題など、解決すべき課題も山積しています。

こうした背景の中、注目を集めているのが「国際観光旅客税(出国税)」です。この制度を通じて、観光による利益をより広く社会へ還元しようとする動きが進んでいます。

本記事では、国際観光旅客税とは何か、その仕組みや最新の動向、そして課題について、超わかりやすく解説していきます!

国際観光旅客税とは?

国際観光旅客税とは、日本を出国するすべての人に対して1人1,000円を課す税金で、2019年1月7日から導入されました。航空券代に上乗せされる形で徴収され、税収は観光資源の整備や訪日客の利便性向上や混雑対策や多言語対応の強化などに使われています。

税額

国際観光旅客税の税率は、「出国1回につき1,000円」と定められています。

対象者

国際観光旅客税の対象者は、「船舶又は航空機により出国する旅客」です。

訪日外国人だけだけでなく、日本人も対象です。

ただし、以下の人は非課税となります。

  • 船舶又は航空機の乗員
  • 強制退去者等
  • 公用船又は公用機(政府専用機等)により出国する者
  • 乗継旅客(入国後24時間以内に出国する者)
  • 外国間を航行中に、天候その他の理由により本邦に緊急着陸等した者
  • 本邦から出国したが、天候その他の理由により本邦に帰ってきた者
  • 2歳未満の者
納税の流れ

納税方法は、大きく2つあります。
国際旅客運送事業を営む者による特別徴収」と、「旅客による納付」です。

「国際旅客運送事業を営む者による特別徴収」は、航空会社が運賃に上乗せする形で、国際観光旅客税を徴収し、航空会社がまとめて国へ納付する方法です。

プライベート・ジェット等を利用した場合には、旅行者が直接税関で納税します。(旅客による納付)

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国際観光旅客税の実態とは?

国際観光旅客税が、どのように利用されているのかをみてみましょう。

国際観光旅客税の収入額

国際観光旅客税は、仕組み上、日本を出国する人が増えれば税収が増えていきます。
そのため、新型コロナウイルスの影響で、一時的に減収となったものの、インバウンド増加に伴って、今後も税収が増えていくことが期待されます。

参照:租税及び印紙収入決算額調一覧(財務省)
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国際観光旅客税の使途

国際観光旅客税の使途は、訪日外国人旅行者2030年6,000万人等の目標達成にむけて、「① ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備」「② 我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化」「③ 地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上」の3つの分野に充当する方針が掲げられています。

実際に国際観光旅客税は、複数の省庁により活用されていますが、その多くは「観光庁」の予算に割り当てられています。
主に「持続可能な観光地域づくり」「地方を中心としたインバウンド誘客の戦略的取組」「国内交流拡大」に活かされています。

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令和7年度の観光庁予算では、どう活かされる?

それでは、最新の令和7年度の観光庁予算においては、国際観光旅客税がどのように活かされるのでしょうか。

令和7年度は、地方を中心としたインバウンド誘客の取り組みを中心に、訪日プロモーションや円滑な出入国・通関等の環境整備に大きく予算が計上されています。

ちなみに、令和6年度では、共同キオスクの導入(ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備)や海外MICE見本市における日本ブースの出店(我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化)、文化財や国立公園に関する多言語開発の整備(地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上)などの取り組みが実施されました。

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出典:観光庁関係予算決定概要

国際観光旅客税の課題

国際観光旅客税は、日本の観光振興や出入国手続きの円滑化を目的として導入され、その税収はさまざまな施策に活用されています。しかし、その運用にはいくつかの課題も指摘されています。ここでは、制度の現状や課題について詳しく見ていきます。

制度の公平性

国際観光旅客税の議論でよく挙げられるのが「制度の公平性」です。現在の制度では、出国者全員が一律で負担する仕組みのため、経済効果の大きい観光客(長期滞在者や高額消費者)とそうでない層との間で公平性が保たれているのか、議論がされています。

しかし、この議論は「租税条約」によって制約されるため、実質的な見直しは困難とされています。

租税条約とは?

租税条約とは、二重課税の防止や脱税対策を目的に各国間で結ばれる条約であり、各国の税制度の枠組みを定めるものです。
国際観光旅客税は日本を出国するすべての人に一律1,000円が課される税ですが、租税条約の「国籍無差別」条項との関係上、日本人、外国人に等しく負担を求めることが前提となります。そのため、現行の一律課税の仕組みが維持されています。

関連資料

e-Gov 法令検索
国際観光旅客税法

電子政府の総合窓口(e-Gov)。法令(憲法・法律・政令・勅令・府省令・規則)の内容を検索して提供します。

laws.e-gov.go.jp

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  • この記事を書いた人

上野 颯

添乗員・観光イベントプランナー

1998年 愛知県一宮市生まれ、岐阜市育ち
中学生で最年少の観光案内人としてデビュー。
旅行会社やIT企業での経験を経て、公立高校商業科(観光ビジネス)の講師や観光戦略の立案、ローカル鉄道の列車企画・バスツアーの企画など、多岐にわたる活動を展開しています。

「観光の未来をもっと、おもしろく」をテーマに、このサイトでは観光業界で働く皆さまに役立つ情報を発信しています。

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