インタビュー 地域

通過型観光地と評された寺泊で、VILLA VOIXはどう滞在価値を設計したのか

2026年2月23日

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私はこれまで、観光地としての魅力の延長に宿泊が生まれるのだと思っていました。
しかし、寺泊で見たVILLA VOIXは、その順番を逆から設計しているように見えました。

魚のアメ横と呼ばれる寺泊魚市場には多くの観光客が訪れますが、基本は「買う」観光です。
遠方から訪れた観光客は、魚を持ち帰ることが難しく、結果として滞在につながりにくい構造があります。

その寺泊で、「行きたい」をつくり、さらに「泊まりたい」までを設計する挑戦が始まっていました。

この記事では、通過型観光地と評された新潟県長岡市寺泊で、滞在型観光地への転換に挑む「VILLA VOIX」を、現地視察と取材を通してレポートします。

この記事は、筆者が実際に訪れた上でのレポートしたものです

教えてくれた人

profile
鈴木 郁哉

VILLA VOIXの運営を山形県と新潟県で担当。
通過型観光地と評される地域において、宿泊施設の枠を超えたヴィラ運営を実践。
地域事業者と連携しながら〝高稼働率〟を実現している。
国内向けPRに加え、インバウンド集客にも取り組んでいる。

昼で完結する観光地が課題の寺泊

※クリックで拡大できます

新潟県長岡市には、日本三大花火の一つである長岡大花火や、寺泊の〝魚のアメ横〟と呼ばれる魚の市場通りなど、全国的にも知られた観光資源があります。

しかし、長岡大花火は年に一度の開催であり、通年で人を呼び続ける観光とは言えません。
そのため、通年型の観光という視点で見ると、長岡市の代表的な観光地は「寺泊」と言えます。
実際、多くの観光客が寺泊の魚の市場通りを目当てに訪れ、昼間は大変な賑わいを見せます。

一方で、観光の時間は昼に集中し、夜の滞在にまでつながるケースは決して多くありません。

寺泊魚の市場通り

長岡大花火大会

観光地としては決して有利とは言えない長岡市
※クリックで拡大できます

新潟県内の観光地を見渡すと、長岡市は決して有利な立地とは言えません。

例えば、スキーリゾートとして全国的に知られる「越後湯沢」は、首都圏から新幹線でのアクセスが良く、宿泊を伴う観光地として確立されています。
また、県庁所在地である「新潟市」は、空港や港を抱え、観光やビジネスの拠点として人の流れが集まりやすい都市です。

さらに、新潟を代表する観光地の一つであり、世界遺産登録で注目を集める「佐渡島」へ向かうフェリーも、新潟市の港から出航しています。
長岡市から直接船が出ているわけではなく、観光動線の中心はあくまで新潟市側にあります。
(もともとは寺泊港からの出航もありましたが、2019年に廃止となりました。)

こうした中で、長岡市の通年型観光地として知られているのが「寺泊」です。
しかし寺泊へは、長岡駅からバスでおよそ1時間半ほど。自家用車でも1時間程度かかり、決してアクセスが良いとは言えません。

つまり長岡市は、県内の主要観光地と比べても、
交通・拠点・観光動線のいずれにおいても強い優位性があるとは言い難い地域と言えるでしょう。

長岡の寺泊で、「行きたい!」をつくる。そして「泊まりたい!」までを設計する。
寺泊では、いまその挑戦が始まっています。

「行きたい!」「泊まりたい!」をつくるヴィラ VILLA VOIXの挑戦

魚のアメ横・寺泊はなぜ「通過型観光」になるのか?

私は、魚のアメ横と呼ばれる「寺泊魚市場」を訪れたとき、ふとこんなことを思いました。

「このあと帰るまでの移動時間を考えると、魚は腐ってしまう。買って帰るのは難しいな。」

寺泊の魚市場は、基本的に「買う」ことが中心の観光地です。
そのため、遠方から訪れる観光客にとっては、立ち寄りにくい面があります。

そうなると、選択肢は大きく二つです。
周辺で食べて帰るか、日帰りできる距離の人が買い物に訪れるか。

もちろん周辺には食事ができる店もあります。
しかし、他の海の観光地と比べると、食事を楽しむ場所は決して多いとは言えません。

こうした構造から、寺泊は「通過型観光地」になりやすい傾向があります。

だったら、「夜に食べる場所」を作ればいい!!

寺泊魚市場から徒歩およそ10分。
VILLA VOIXは、市場通りで買った食材をそのまま楽しめる立地にあります。

VILLA VOIX内にはキッチンを完備。
炊飯器や調理器具にもこだわり、米どころ・新潟のお米をより美味しく味わえる高級炊飯器(Vermicular)が用意されています。

Vermicularの炊飯器
BALMUDAのレンジ&オーブン

さらに、地元の味噌屋とコラボレーションした味噌汁や地元のワインも用意。
市場で買った魚と一緒に、新潟の食を楽しめる仕組みが整えられています。

(左)長岡市の味噌醤油醸造元と共同開発した味噌汁
(右)ワインやシャンパンも用意

昼に賑わう市場で買い、夜はゆっくり食べる。
VILLA VOIXが出来たことで、そんな滞在の選択肢が寺泊にできました。

滞在を贅沢にするヴィラとしての工夫も欠かさない

VILLA VOIXでは、滞在そのものを楽しめる空間づくりにもこだわっています。
太陽の光を浴びながらゆっくり過ごせるテラスを備え、日中は開放的な時間を過ごすことができます。

ルーム:伽藍 -GARAN-

さらに、施設内にはサウナも用意。
旅の疲れを癒やしながら、ゆったりとした時間を楽しめます。

ルーム:碧天 -HEKITEN-

夜にはプロジェクターで映画や映像を楽しむこともでき、グループや家族での滞在をより贅沢なものにしてくれます。

ルーム:滄海 -SOKAI-

競わないという戦略──地域旅館との関係性

VILLA VOIXは、寺泊にとっては新しく生まれた宿泊施設です。
いわば、この地域に後から入ってきた“新参者”でもあります。

だからこそ、これまで寺泊を支えてきた旅館と競合する形にはしないことを大切にしていると言います。

実際、VILLA VOIXは最大22名まで宿泊できる一棟貸しのヴィラで、利用の仕方や客層も旅館とは大きく異なります。
そのため、宿泊のスタイルとしても直接競い合う関係にはなりにくい設計になっています。

また、地域の旅館には事前に話をしながら理解を得てきました。
現在ではケータリングなどで連携する関係も生まれ、地域全体で滞在を支える形がつくられています。

新しく入る施設だからこそ、地域と対立するのではなく、共につくっていく姿勢を大切にされていました。

地元旅館と連携した朝食ケータリング

リピーターを生み出す“関係”を生む設計。

VILLA VOIXでは、単に宿泊して終わるのではなく、地域との関係を生み出すことを大切にしています。
観光客として訪れるだけでなく、この土地のファンになり、何度も足を運びたくなるような体験をつくることが目指されています。

その一つが、食の体験です。
地元のミシュランシェフを招き、寺泊の新鮮な魚を使った寿司をその場で味わえる機会も用意されています。
さらに、地元の料亭による解説付きで寿司を楽しむプログラムもあり、寺泊の食文化をより深く知ることができます。

地元のミシュランシェフの出張サービス
地元ミシュランシェフの出張も可能
地元料亭による解説付き寿司(構想中)
魚の説明はもちろん、地元トークもしてくれる

また、海のアクティビティ事業者とも連携し、海を楽しむ体験も用意されています。

地元の事業者と連携したアクティビティ
目の前の海でSUP体験
山菜取り体験

こうした地域とつながる体験を通して、観光客として訪れた人が、次第にこの地域の“生活者”のように関わっていく関係が生まれています。
リピーターも少しずつ増えていると言います。

寺泊の挑戦から見える、通過型観光地の可能性

今回の視察を通して感じたのは、ヴィラという施設そのものよりも、「土地の観光構造」をどう読み解くかが重要だということです。

寺泊は魚市場という強いコンテンツがあり、昼間は多くの観光客が訪れます。しかし、宿泊につながりにくく、夜の時間が弱いという特徴があります。つまり、観光客は来るものの、滞在にはつながりにくい構造を持っていました。いわゆる「通過型観光地」です。

VILLA VOIXの取り組みは、この構造を前提に設計されています。
市場で食材を買い、夜に食べる場所をつくり、地域の事業者と連携しながら滞在の時間を生み出していく。
施設単体の魅力だけではなく、地域の資源と組み合わせて「泊まる理由」をつくっています。

この事例から見えてくるのは、観光地づくりは単に施設を整備することではなく、その土地がなぜ通過型観光地になっているのかを分析し、最適な滞在の形を設計することだという点です。

寺泊という土地の特性を読み解き、その上で「行きたい」と「泊まりたい」を結びつける。
VILLA VOIXの取り組みは、多くの観光事業者にとって一つのヒントになるのではないでしょうか。

ありがとうございました!

VILLA VOIXの公式サイトはこちら

VILLA VOIX(ヴィラ ヴォワ) 碧ノ庵-あおのいおり-|寺泊での宿泊・貸別荘
VILLA VOIX(ヴィラ ヴォワ) 碧ノ庵-あおのいおり-|寺泊での宿泊・貸別荘

新潟県寺泊の魚の市場通り(魚のアメ横)に近接した宿泊施設、VILLA VOIX(ヴィラ ヴォワ) 。貸別荘スタイルの高級邸宅のような贅沢なプライベート空間で家族・友人・大切な人たちとの特別な時間を。

villavoix.com

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  • この記事を書いた人

上野 颯

観光イベント企画・添乗員

愛知県一宮市生まれ、岐阜市育ち
中学生で最年少の観光案内人としてデビュー。
旅行会社やIT企業での経験を経て、公立高校商業科(観光ビジネス)の講師や自治体への観光戦略の立案、ローカル鉄道の列車企画・ツアーの企画など、多岐にわたる活動を展開しています。

「観光の未来をもっと、おもしろく」をテーマに、観光業界で働く皆さまに〝若者目線〟も入れながら役立つ情報を発信しています。


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