愛知県の最北端に位置する、犬山市。
2024年にナビタイムが発表した訪日客の"冬の人気急上昇ランキング"で1位に選ばれるなど、観光都市として注目されています。
犬山市は、国宝犬山城とその城下町、国宝如庵、日本八景の1つ名勝木曽川、木曽川鵜飼など、東海地方有数の観光都市で、これらの豊富な資源を活かすとともに、株式会社名古屋鉄道(名鉄)など連携した大規模広報戦略により、観光地としての知名度向上や観光客数増加を果たしてきました。
私自身、犬山市からほど近い岐阜に住んでおり、犬山市の観光地としての人気ぶりはかなり前から感じていました。
この記事では、訪日外国人のみならず日本人観光客にも人気である犬山市の成功要因と課題について、犬山市観光戦略や研究レポート等を参考に分かりやすくまとめていきます!
なるべく、他の観光地にも応用できるように抽象化しながらまとめました!
犬山城の入場者数は、過去最低19万人から過去最高60万人へ
まず、犬山市の観光戦略の成果について、まとめていきます!
犬山城入場者数のは15年で3倍
犬山城の入場者数は、過去最低を記録した2003年の190,585人から、2018年には3倍以上の618,949人まで回復しました。
城下町観光客数が5年で2.5倍
城下町の歩行者天国開催日の歩行者数は、2012年は1日平均約1700人だったところが、5年後の2017年には約4500人に増加し、約2.5倍の急成長となりました。
外国人観光客”冬の人気急上昇エリア”1位
引用:株式会社ナビタイムジャパン 訪日外国人旅行者が訪れる冬の人気急上昇エリアを分析
ナビタイムが2024年3月に発表した冬季の人気急上昇ランキングで愛知県犬山市はトップにランクインしました。
訪日外国人滞在数増加率が昨年の約4倍で、2位以降のスキーをはじめとした冬季ならではのアクティビティを抑えての1位となりました。
観光都市・犬山市
犬山市は、愛知県に位置する歴史と自然の魅力が詰まった観光地です。
ここでは犬山市の代表的な観光名所についてまとめます。
国宝犬山城と城下町
犬山城は、日本最古の木造天守閣を持つ国宝のお城です。周囲の城下町は食べ歩きが楽しめる場所として知られ、多くの観光客で賑わっています。特に、名物の五平餅や串カツなど、地元の味を堪能できます。
また、城下町には三光稲荷神社があり、ピンク色の絵馬が有名です。この絵馬はインスタグラムでも大きな話題となり、恋愛成就を願う若者層が殺到しました。
国宝茶室 如庵
如庵(じょあん)は、愛知県犬山市にある国宝の茶室で、1618年に茶人・織田有楽斎(織田信長の弟)によって建てられました。
如庵の茶室は、三畳台目という独特の設計を持つ「草庵風」で、簡素ながらも美しい空間が特徴です。この茶室は、茶道の精神を体現しており、自然素材を活かした落ち着いた雰囲気が魅力です。現在、如庵は犬山城の近くに移築され、茶道愛好者や観光客にとって重要な訪問先となっています。
ユネスコ無形文化遺産「犬山祭」
犬山祭は、毎年4月の第一週末に愛知県犬山市で開催される伝統的な祭りです。
約380年の歴史を持ち、国の重要無形民俗文化財に指定されています。また、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。
祭りの見どころは、13台の絢爛豪華な山車が町を巡行する光景です。各山車にはからくり人形が搭載され、町内を巡る際に巧妙な動きを披露します。また、夜には山車に提灯が灯され、幻想的な雰囲気が広がります。犬山祭は地域の誇りであり、多くの観光客が訪れる一大イベントとなっています。
名勝木曽川と鵜飼
犬山市を流れる木曽川は、風光明媚な景観で知られる名勝地です。この川では、夏季に伝統的な鵜飼が行われます。
鵜飼は、鵜という鳥を使って魚を捕る古代からの漁法で、夜の川面に映える篝火の光と鵜匠の技が幻想的な光景を作り出します。特に犬山の鵜飼は、観光客に人気があり、木曽川の清流とともにその伝統的な風景を楽しむことができます。鵜飼見物の屋形船から眺める景色は格別で、犬山市の夏の風物詩として多くの人々に愛されています。
複数のテーマパーク
犬山市には、多彩なテーマパークが点在しています。
「日本モンキーパーク」は家族連れに人気で、遊園地のほか、モンキーセンターでは様々な種類のサルを観察できます。「博物館明治村」は、明治時代の建築物や文化を体験できるテーマパークで、歴史愛好者におすすめです。「野外民族博物館リトルワールド」は、世界各国の家屋や文化を展示し、グルメや民族衣装の体験が楽しめます。また、「お菓子の城」では、菓子作り体験や美しいスイーツの展示があり、子供から大人まで楽しめるスポットです。
犬山市には、こうした多様なテーマパークに加え、他にも多数のミュージアムや博物館があることも魅力の1つです。
こうしてみると「恵まれた観光資源があるから、成功したんだ!」と思うかもしれませんが、かつての犬山市には観光客数が低迷する苦しい時期がありました。
シャッター街から人気観光地になった戦略とは?
犬山市が観光都市として人気になるために行った具体的な戦略をご紹介します。
城下町の整備
犬山市では、2003年には、中心市街地活性化法(1998年制定)に基づいたTMO(Town Management Organization)として、犬山市と地元企業が「犬山まちづくり(株)」を設立し、空き家・空き店舗の活用などの取り組みが強化されました。
犬山まちづくり(株)が城下町の風情を意識した改装を行い、市内外から募った利用者にテナントとして入店してもらうもので、初期投資の負担をまちづくり会社が肩代わりし、家賃に上乗せして7、8年かけてゆっくりと回収していくことで、出店者の負担を軽減して出店希望者を増やすことができます。
町づくりでよくある問題に、「盛り上がっている観光地で一儲けしてやろう」という軽い気持ちで出店して、すぐに撤退する事業者の増加があります。
これは、行政や町づくり機関の理念の一致せず、非協力的で足並みが揃わない店舗も出てくるため、地域活性が困難になるという課題につながります。
この問題を防ぐために、入店審査には、犬山への思い入れを重視しているそうです。
また,2010年には城下町の電線類の地中化、2011年に城下町の美装化を進めるなど、景観に配慮した町づくりを行なってきました。
整備だけではない!戦略的な広報があった
城下町の整備だけでなく、二時交通の充実化など様々な対策を行った犬山市ですが、それだけで観光客が増えるわけではありません。
町の魅力を磨き上げたり受け入れ体制を整えたりした後には、必ず「広報(PR)」が必要です。
名古屋鉄道(名鉄)との大規模PRを開始
犬山市では、2007年の春から『犬山キャンペーン』と題し、名古屋鉄道と犬山市・観光協会、そして地域の人々が協力し合い、観光客を誘致して地域活性化につなげる目的でプロジェクトの立ち上げを行なっています。
この『犬山キャンペーン』は、2006年に「ハートレイン」という宣伝型のキャンペーンを名古屋鉄道が立ち上げたことが事の発端となっています。
「ハートレイン」で一定の効果を得た名古屋鉄道は犬山市のポテンシャルの高さを改めて理解しました。そこで、鉄道会社主導のキャンペーンではなく、もっと地域を巻き込み、町おこし型の大きなプロジェクトとして展開する考えに至り、連携した町づくりが進められてきました。
東海地方に住んでいる人なら、犬山市と名鉄がタイアップしたCMや広告ポスターを見たことがある人も多いのではないでしょうか。
もともと、明治村、リトルワールド、モンキーパーク、名鉄犬山ホテル等、名鉄グループの運営施設が多い犬山市ですが、2007年から名鉄と犬山市が共に力を合わせて町づくりに取り組むことになりました。
東海地方で影響力の大きい名鉄と協働できたのは大きかったかと思います。
インバウンド客に向けたPR
2018年に犬山市は、台湾の航空会社であるタイガーエア台湾と名古屋鉄道と連携して、台湾高雄ブロガー招請による城下町フリー切符を利用した情報発信の為の取材を実施しています。
そのほかにも、台北での展示会出展、チェジュ航空共同プロモーション、名古屋でのアジア大商談会など様々なインバウンド施策を行なっており、コロナ禍前からインバウンド客誘致に向けて取り組んでいることが分かります。
また、海外向けのPRに合わせて、観光ホームページの多言語化(英・繁体・簡体・韓)などの対応などの受け入れ体制の構築にも力を入れています。
外部要因も観光客の増加を後押し
名古屋圏のテレビ等のマスメディアへの露出度が高い
犬山市は、その魅力的な観光コンテンツの多さから、名古屋圏のテレビ局に取り上げられることが多くあります。
こうしたテレビでのお出かけ情報も、観光客増加に大きな影響を与えていると考えられます。
SNS拡散型観光へ
インスタグラムなどのSNSが普及したことも、犬山市の観光に大きな影響を与えました。
2012年頃から犬山市の観光は、城下町観光から「SNS拡散型観光」に変わっていきます。
その火付け役となったのが、城下町近くにある三光稲荷神社の宮司である水谷さんが考案した、ピンクのハート型の絵馬です。
発想のヒントは以前、水谷さんが勤めていた別の神社で巫女のアルバイトをしていた女子高生の「どうしておみくじの紙はどれも白色なんですか?ピンク色とかなら結んだときキレイなのに」という言葉にあります。
三光稲荷神社には、池の御神水でお金を洗うと何倍にもなって返ってくると信じられている「銭洗い池」があり、2013年に流行していたTVドラマ「半沢直樹」によって「倍返し神社」と話題になりました。(ちなみに、ドラマとの直接的な関係はない)
そこから、ピンクのハートの絵馬も認知が増えて、瞬く間に若者層を中心に人気の観光地となりました。
若者層の観光客が増えるにつれて、城下町の店舗では「インスタ映え」を意識した商品が増えました。
なかでも人気なのは、「恋小町だんご」で、色とりどりの餡が可愛いと話題になりました。
犬山市は、三光稲荷神社の水谷さんの画期的なアイデアはもちろん、SNS(主にインスタグラム)の普及により若者層を中心に認知を拡大できたことが、観光客の増加に繋がりました。
昇龍道ルートの人気とインバウンド需要
2019年には年間3,000万人を超えた日本全体の外国人観光客数は、コロナ禍で落ち込んだものの、再び2019年を上回る勢いで回復しています。
こうした訪日外国人の増加も犬山市の観光には大きな影響を与えました。
なかでも、政府が押し出す「昇龍道」というルートの認知が高まったことは大きかったと言えます。
昇龍道とは、中部地方の愛知県・岐阜県・富山県・石川県を南から北へと縦断する新しい旅の観光ルートです。 能登半島の形を龍の頭に見立てて、この地域が神秘的な昇り龍のように見えることから、このルートをドラゴンルート「昇龍道」と名付けられました。
2024年にナビタイムが発表した「訪日外国人”冬の急上昇エリア1位”」になるなど、海外からも注目を集めています。
観光都市として確立した犬山市の課題とは?
観光都市として確立した犬山市ですが、新たな課題も出てきました。
公開されている犬山市観光戦略をもとに解説していきます!
訪問者の消費額が低い(日帰り:3,846 円、宿泊:15,130 円)
名古屋近郊のお出かけ地として、犬山市では日帰り客の割合が高くなっています。
さらに客層的にも客単価が低く、3,846円となっています。
さらに深刻なのは、お土産等、買い物をして帰る人は 1073 人中 414人にとどまり、来訪者の約 6 割が「買い物」をしていない点です。
観光客の現地消費があってこその観光振興なので、この問題は犬山市の大きな課題の1つとなっています。
観光客の消費単価を上げるために犬山市では、次のような取り組みを行なっています。
株式会社名古屋鉄道との「大人アガル犬山」キャンペーン
株式会社名古屋鉄道(名鉄)との「大人アガル犬山」キャンペーンを実施しています。
「本物」と出会えるまち・犬山というブランディングを行うことで、客単価の高い層(富裕層・シニア層)などの獲得に繋げています。
また、日帰り観光客の約5倍近くの消費額がある宿泊客の増加にも取り組んでいます。(詳細は後述)
代表する名物イメージが希薄(約半数が「思い浮かばない人」)
犬山市の名物について調査したところ、半数以上の方が「思い浮かぶものがない」と回答しています。
消費単価の低さには、こうした名物の認知が取れていないところも理由の1つと考えられています。
串キング決定戦の開催
犬山市では「串ものの町・犬山」としての認知度向上と、名物の創出を目的に串キング決定戦というイベントを開催しています。
また、2024年3月〜8月においては、城下町の32店舗を対象とした「犬山串グルメ春夏の陣」と題して特別パンフレットを作成するなど、訪れた観光客の消費額向上にも力を入れています。
老舗・名店になり得る店舗支援・誘致
名物を作り出すために、老舗や名店になり得る店舗の支援・誘致や、名物を増やすための支援や働きかけを重視していく方向性を固めています。
全国的な知名度は低い
愛知県内や岐阜県からの訪問者が約7割を占めており、全国的な知名度はまだまだ低いと言えます。
一般的に、遠方からの観光客の方が滞在時間が長いという特徴もあり、全国から観光客が訪れる観光地になれるかも重要なポイントとなります。
リニア中央新幹線開業を意識した関東・関西圏との連携
全国的な知名度を上げて、名古屋圏だけでなく関東や関西からの観光客が増えれば、宿泊客の増加も見込めます。
また、関東や関西などの遠方の観光客は、名古屋市での宿泊になりがちで、犬山市での宿泊してもらうための取り組みも必要不可欠です。
宿泊数が少ない
ホテルインディゴ犬山有楽苑・ホテルμスタイル犬山エクスペリエンスの開業
2021(令和3)年7月にホテルμスタイル犬山エクスペリエンスが開業し、2022(令和4)年3月にホテルインディゴ犬山有楽苑が開業しました。
国宝茶室如庵を有する⽇本庭園・有楽苑の中にあるホテルインディゴは、静かでミステリアスな洗練された空間を味わうことが出来ます。
魅了的な宿泊施設が開業したことは、犬山市の観光には非常に大きな効果が期待されています。
ナイトタイムエコノミーの充実(イベント、飲食店、イルミネーション、ライトアップなど)
犬山市での宿泊客の増加のためには、「犬山で泊まる理由」を作り出すことが不可欠です。
2日間以上で市内の観光を楽しんでもらうコンテンツ造りはもちろん、近郊の都市での宿泊ではなく犬山市で泊まりたくなる工夫も必要です。
犬山市観光戦略ではその取り組みの一つとして、ナイトタイムエコノミーの充実化が挙げられています。
犬山市では、夜に楽しめる施設が少ないという課題が指摘されており、今後は夜も楽しめる施設やコンテンツの造成に力を入れていく方針も公表されています。
ナイトタイムエコノミーの成功事例といえば、長野県阿智村の昼神温泉が有名です。
阿智村は、日本一の星空ナイトツアーと早朝の雲海テラスを造成したことで、昼神温泉の宿泊客増加に成功しました。
ナイトタイムエコノミーはもちろん、モーニングタイムエコノミーも組み合わせることができれば、宿泊客数増加が期待できます。
オーバーツーリズムの影響
多人数の来訪によるオーバーツーリズム問題(交通混雑、ごみの放置、住民生活との軋轢等)が生じていることも、課題の1つとなっています。
今後は、受け入れ環境の整備(看板、ゴミ、休憩所、施設整備)にも取り組んでいく必要があり、対策方法が検討されています。
若者層からの支持を得た犬山市の観光戦略
ここまで犬山市の観光戦略の成功要因と課題について、解説してきました。
まとめると次のようになります。
・城下町の整備や道路の美装化などの対策により、観光地としての魅力が向上した
・名古屋鉄道と目指す方向性が一致して、協働できたことでPR等で大きなメリットがあった
・Instagramの普及により、インスタ映えするスポットとして人気に火がつき、若年層の観光客数が増加した
・訪日外国人客の増加やPR強化により、外国人観光客も増加した
一方で、犬山市には「観光客の消費額が低い」という課題がある
その原因として、以下のように考えられています。
・現在の観光客が若年層である
・東海圏からの観光客が多く、宿泊客が少ない
・思い浮かぶ名物が少なく、消費に繋がらない
・城下町観光とテーマパーク観光が連携できておらず、どちらか片方の観光のみで終わってしまう
一般的に「若年層を狙った観光マーケティングは観光消費額に貢献しない」という風に言われることが多くあります。
確かに、犬山市の観光の課題には、消費額が低いことが挙げられています。
しかし近年は、あえてZ世代を中心とした若者をターゲットとする観光地が増加しています。
一体なぜでしょうか?
その理由を、犬山市の観光状況と照らしながら解説していきます。
話題の中心は「若者」から。時代の変化
NTTドコモ モバイル社会研究所が2023年に発表したデータによると、10代〜20代が「SNS」などのインターネットから情報を得ているのに対し、50代以上は「テレビ」から情報を得ている現状があります。
つまり、観光消費額が大きいと期待される「富裕層・シニア層」の多くは、「テレビ」から情報を得ています。
しかし、SNSが普及した昨今は、「テレビ」の制作側であるテレビ局も「SNS」から情報を得ていることが多くあり、「SNSで話題の行列のできる極旨ラーメン屋を取材してきました!」といったフレーズをテレビで見たことがある方も多いのではないでしょうか。
今の時代は、SNSで話題 → テレビで取材 → 50代以上などの幅広い層にリーチ という構図が出来ているのです。
具体的な事例では、2020年に大ヒットした韓国ドラマ「愛の不時着」は、中高年に届く数ヶ月前に、感度の高いZ世代では話題になっていたことから多くのメディアが取り上げて、中高年にも人気になりました。
2022年に上映されたインド映画「RRR」においても、劇中にある「ナートゥダンス」がTIkTokで話題になり、世界の果てまでイッテQ などの人気テレビ番組などがこぞって取り上げました。
幅広い世代に普及しているSNSですが、統計を見ると、やはり高校生や大学生の利用が多くを占めており、"SNSの中心的存在"であります。
こうした時代の流れもあり、SNSの中心人物である”若年層”の心を掴んだ犬山市は、名古屋圏を中心に多数のテレビ番組に取り上げられました。
SNSとテレビ等のマスメディアの両輪があって、幅広い層から「お出かけは犬山!観光は犬山!」という観光都市としての認知を獲得できたのではないかと考えています。
中長期的目線では効果が高い若年層〜テレビの失敗〜
テレビ局はこれまで「世帯視聴率」という数字に重きをおいていました。世帯視聴率とは、何世帯でテレビをつけていたかを示す割合です。
そのため、テレビをよく見る層である中高年を狙ったテレビ番組を作ることで、世帯視聴率の向上を目指しました。
また、スポンサーである企業も、お金を持っていない若年層ではなく、中高年を中心ターゲットにしていたため、テレビ局の客層とスポンサーのターゲット客層が一致していました。
しかし、老後2,000万円問題が出たあたりから中高年の貯金傾向が高まったという背景と、若い時に触れなかった商品は生涯触れない可能性が高いということに企業が気づいたことで、若年層向けに商品を開発する企業が増加しました。
こうしたスポンサーの意向もあって、テレビ局は「世帯視聴率」から「個人視聴率」を重視するようになりました。個人視聴率とは、何人テレビをつけていたかを示す割合です。何人見ていたかが計算可能になります。
最近、若者向けのテレビ番組が増えたのも、こうしたスポンサー企業のターゲットの変化という経緯があります。
しかし、若者の約40%は毎日テレビを見ていない現実があり、テレビ局は若年層の視聴者獲得にかなりの苦戦を強いられています。
またこれから先、テレビを知らずに育った子どもが増え、テレビ業界はより厳しい現実に直面すると予想されています。
一般的に、若い時に触れなかった商品は大人になってから急に触れることは多くはありません。
例えば、若い時に好奇心半分にタバコを吸い始めてハマっていくケースが多く、40歳を過ぎてから、急に「タバコを吸ってみよう!」とはなりにくいものです。
他にも、若い時にビールやコーヒーを飲まなかった人が、40歳を過ぎてから急に飲み始めるのも稀でしょう。(ゼロではありませんが)
つまり、若い時に自社の商品に触れてもらうことはビジネスでは非常に重要であるということです。
不謹慎な話ですが、今のテレビの主要視聴者は、ここ数年から十数年で絶対数が減少します。
しかし、現在テレビを見ていない多くの若者が、自身が40歳を過ぎてから急にテレビを見始めることは考えにくいでしょう。
これは犬山市の観光に置き換えると、若者層を獲得したことは未来において大きな効果が期待できます。
観光地の成功は「思い出してもらえる確率」で決まると言われていますが、一度訪れた若者が結婚して子供を産んだ際のお出かけ地としても「犬山」を思い出してもらえる確率は高いでしょう。
そうしてみると、今来ている若者に、犬山の土地の魅力や子育てのしやすさを伝えることで将来的な住宅の選択肢になったり、子供とのお出かけスポット(テーマパークなど)もたくさんあることを伝えていくことで、十年後の観光消費額は大幅に改善されることが期待されます。
その上で、富裕層やシニアもターゲットにして、認知を全国に広げていければ、可能性が無限大です。