マーケティング

未来の観光客を予測!統計学で切り開く世界水準のマーケティング戦略

2025年1月8日

※記事内に広告・PRを含む場合があります

観光業界では、競争が年々激化しています。新たなプレイヤーの参入が相次ぎ、国内での顧客争奪戦はますます激しくなる一方、インバウンド市場の拡大により、世界を“競合”と捉えたグローバルな視点でのマーケティングが求められる時代が到来しています。

厳しい環境になるからこそ、データを活用した賢いマーケティング戦略を取り入れることが重要視されています。
そこで今回は、観光業のマーケティングに今すぐ役立つ統計学の基本をわかりやすくご紹介いたします!

顧客の傾向をデータで見える化する!【記述統計学】

まず最初にやるべきことは、顧客の傾向を知ることです。
どんな観光客が、どんな時期に、どんなことを求めているのか。これを知るために使うのが、記述統計学です。

例えば、過去1年分の観光客データを見てみましょう。
「年齢層」「旅行目的」「滞在期間」などを整理することで、どんな観光客が多いのかなどの特性を知ることができます。

記述統計学とは、与えられたデータの性質を明らかにする統計学です。

観光客属性の分析の具体例
クリックで拡大できます。
クリックで拡大できます。
分析からの洞察(例)

女性向け施策の強化
 訪問者の55%が女性であるため、女性が喜ぶインスタ映えスポットや美容に特化したサービスを提案。
20代向けプロモーション
 最大の訪問者層である20代(30%)をターゲットに、SNSキャンペーンや若者向けの割引プランを企画。

平均や中央値、最頻値なども記述統計学の1つです。データを分かりやすく表現するという「要約」を行う学問分野であると押さえておきましょう。

未来の観光客数を予測!【推測統計学】

次は、観光業で最も重要なことの一つ、未来の観光客数を予測することに役立つ統計です。
未来の観光客数を予測できれば、人員の配置や仕入れ過多で不必要な経費がかかったり、逆に人員不足や仕入れ不足によるクレームや機会損失を防ぐことができます。
未来予測に役立つのが、推測統計学です。

例えば、「過去3年分のデータを使って、次のシーズンの観光客数を予測」することができます。
気温や天気、過去のイベントなどの情報を使い、回帰分析という手法で予測します。
今後の繁忙期や閑散期を予測し、どのタイミングで集中的に広告を出すか、イベントを開催するかなどを計画できます。

「何月が一番混むのか?」、「次の観光シーズンはどうなるのか?」などを予測するために、推測統計学を駆使してみましょう。

推測統計学とは、標本から母集団の特徴、性質を推定する統計学です。

観光地の訪問者数予測の具体例
クリックで拡大できます。
ここでは説明を割愛しますが、月ごとのデータを回帰分析していくと、この画像の「結果(仮定)」の値になります。
クリックで拡大できます。
クリックで拡大できます。
分析からの洞察(例)

広告費の最適化
 広告費をさらに増やせば訪問者数を増加させられる可能性がある。ただし、予算に応じて費用対効果を分析し、無駄な支出を削減。
イベント開催の計画立案
 イベントが訪問者数に大きな影響を与えるため、年間のイベント開催スケジュールを増やし、観光地の活性化を図る。
天候の影響を考慮した施策
 雨の日に集客が減ることを考慮し、天候に左右されない屋内施設の充実や、雨の日割引キャンペーンを検討。

晴れの日・広告費・イベントの開催のいずれか(もしくは全部)の数値を上げれば、訪問者数UPに繋がります。
ただし天候は操作できないため、雨でも楽しめる施設の充実などを検討します。

広告の効果を最大化!【ベイズ統計学】

次に紹介するのは、ベイズ統計学。広告を出すタイミングや、どんなメッセージが効果的かを決めるために、役立つ統計学です。

例えば、過去に行ったプロモーション活動の効果を考えてみましょう。
ベイズ統計学を使うと、過去のデータを基に新しいデータを反映させて、最適な広告戦略を見つけることができます。
たとえば、ある広告が過去に成功した理由を分析し、その情報を元に次の広告を調整できます。

これを繰り返すことで、どんどん広告の効果がアップします!過去の成功と失敗を活かし、未来に活用するのが、ベイズ統計学の強みです。

ベイズ統計学とは、事前の知識や仮定(過去のデータや経験)と新しいデータを組み合わせて、母集団の特徴や性質を推定する統計学です。

新しい観光プランの人気を予測する(例)
クリックで拡大できます。
クリックで拡大できます。
クリックで拡大できます。

これらの結果は、「ベイズの定理」の公式を使用して算出します。
詳しくは、別の記事で解説します。

ベイス統計の結果を生かす戦略

広告やプロモーション
 「65%の人が満足」といった内容で宣伝する。
・プランの改善:
 満足率が65%なら、さらに改善して80%を目指す方法を検討する。
追加調査
 試した人数が少ないので、もっと多くの人に体験してもらい、さらに正確なデータを集める。

ROI(投資対効果)を最大化するために!

最後に、ROI(投資対効果)を最大化する方法をご紹介します。
マーケティング活動に投資したお金がどれだけ効果を発揮しているかを測らなければ、無駄な支出が増える一方です。

例えば、回帰分析を使って、広告費用と観光客数の増加との関係を見てみれば、広告を出した月に、どれだけ観光客が増えたのか、または減ったのかを数値で確認できます。これを基に、次回の広告予算を調整することができます。

データをもとに最適な広告費用を設定し、無駄なく投資できるようになります。

広告費用と観光客数の増加との関係を見る(例)
クリックで拡大できます。
クリックで拡大できます。

結果から、広告費用がゼロでも、月に最低3,000人の観光客が来ることが分かります。
また、広告費用を1万円増やすごとに、観光客数が50人増加することも示しています。

結果を生かす戦略

次回の広告費用を決定する
 広告費用を100万円にした場合: 観光客数は8,000人に増加する予測。
 広告費用を150万円にした場合: 観光客数は10,500人に増加する予測。

ROI(費用対効果)の検討
 広告費用と観光客の増加による収益を比較して、広告予算の適正化を図ることが出来ます。
 例えば、観光客1人あたりの平均支出が1万円の場合、
 100万円の広告なら、8,000人 × 1万円 = 8,000万円の収益
 50万円の広告なら0,500人 × 1万円 = 10,500万円の収益

データ分析を駆使する〝世界〟の観光地と戦うために。

こうしたデータ分析を駆使する世界と戦うためには、私たちは統計学の力を最大限に活用し、効果的なマーケティング戦略を構築していく必要があります。
観光業の未来は、データに基づく意思決定によって大きく変わります!
変化する市場に対応し、他の観光地との差別化を図るために、今こそデータ分析を実践に取り入れる時です。
データを武器に、次世代の観光マーケティングで世界に挑みましょう!

日本の観光業界は、記述統計学が用いられることが多いと感じます。
今後は、推測統計学やベイズ統計学も利用した”戦略的なマーケティング”が求められます。

※観光ONEでは、情報の提供を目的としており、公平性を心がけて執筆しています。
特定の国、組織、政策、または個人を擁護したり、批判したりする意図は一切ありません。
また、記事内容に誤りや著作権などの侵害がある場合は、速やかに対応いたしますので、お問い合わせよりご連絡ください。

  • この記事を書いた人

上野 颯

添乗員・観光イベントプランナー

1998年 愛知県一宮市生まれ、岐阜市育ち
中学生で最年少の観光案内人としてデビュー。
旅行会社やIT企業での経験を経て、公立高校商業科(観光ビジネス)の講師や観光戦略の立案、バスツアーの企画など、多岐にわたる活動を展開しています。

「観光をもっと、おもしろく」をテーマに、このサイトでは観光業界で働く皆さまに役立つ情報を発信しています。

【ご質問・お問い合わせはお気軽にこちらから】

-マーケティング