観光行政

【50兆円目指す】"クールジャパン"とは?分かりやすく簡単に解説します!

2024年6月4日

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2024年6月4日に岸田総理が「クール・ジャパンで50兆円展開へ」と発表しました。
具体的には、2033年までに漫画や観光、農林水産物輸出などの合計で年50兆円規模の展開を目指すというものです。

話題になっているクールジャパンですが、
「聞いたことあるけど、具体的に分からない!」
「なんか難しそう…!!」
という方もいらっしゃると思います。

そこでこの記事では、インバウンド事業にも関わる私が「クールジャパン戦略」について簡単に解説いたします!

助成金や補助金の活用の際にも、日本が今後目指す姿を知っていることは重要です。
また、今回発表された「知的財産推進計画2024」についても解説いたしますので、ぜひ最後までご覧ください!

観光庁だけでなく、各省庁が関わるビックプロジェクトです。
インバウンドは、クールジャパン戦略のうちの重要な基盤の1つと捉えることも出来ます。

なぜ日本は「クールジャパン」に取り組むのか

近年は、製造業の海外生産比率が高まり、国内での雇用は減少傾向にあります。また、大きな需要が期待される新興国市場(中国、インド、ブラジルなど)においても、日本企業は韓国や中国企業との厳しい競争に直面している状況です。

さらに少子高齢化も進むなか、今後も付加価値と雇用を生み出し続けるためには、競争力の源泉となる新たな産業群が必要となります。
そこで、海外からクールと評される日本の製品やサービスを世界に提供し、今後急速な経済発展や市場拡大が予想されるアジア等の新興国の需要を取り込むことで、日本経済の成長や雇用創出につなげようとする試みが「クールジャパン戦略」です。

クールジャパンは、単なる経済政策だけでなく、国際関係の強化や文化外交の一環としても重要視されています。

内閣府の知的財産戦略本部が2010年6月に策定し、「クールジャパン戦略」の端緒となった「知的財産推進計画2010」では、「外国人にとってクール(かっこいい)と捉えられる日本の製品、コンテンツ、文化群を総称して使用される言葉」と説明されており、現在の内閣府の公式サイトでは、下記のように定義されています。

クールジャパン(CJ)とは、世界から「クール(かっこいい)」と捉えられる(その可能
性のあるものを含む)日本の「魅力」である。「食」、「アニメ」、「ポップカルチャー」など
に限らず、世界の関心の変化を反映して無限に拡大していく可能性を秘め、様々な
分野が対象となり得る。

内閣府:クール・ジャパン戦略について

【要点】クールジャパンの概要

クール・ジャパンは、「食」、「アニメ」、「ポップカルチャー」などに限らず、「伝統文化」や「ロボット」「コンビニ」など外国人が興味をもつきっかけとなる様々なコンテンツが対象となります。

それらのコンテンツの背景にある歴史・文化・振る舞い等を通して、日本のファンを増やしていくことを目指しています。

様々な産業が手を取り合って「日本だいすき」を増やしていこう!という取り組みです

引用:内閣府
内閣府サイトを参考に観光ONEにて作成

クールジャパンには「官民・業種間を超えた相互連携」が求められており、各省庁にそれぞれの役割が与えられています。

総務省放送コンテンツの海外展開支援塔
外務省在外公館での日本文化発信等
財務省(国税庁)日本産酒類の魅力発信等
文科省(文化庁)文化芸術の振興や海外発信等
農水省日本食・食文化の普及等
経産省コンテンツの海外輸出等
国交省(観光庁)訪日旅行促進に向けた情報発信等

クールジャパンの成功事例

クール・ジャパンの歴史は古く、2010年より内閣府知的財産戦略推進事務局が推進している「クールジャパン戦略」に基づいて、2013年に経済産業省所管の官民ファンドとして海外需要開拓支援機構(通称:クールジャパン機構)が設立されて以降、本格的に取り組みが開始されました。

これまでのクールジャパン戦略で、どのような成功事例があるのでしょうか?

北海道 ニセコ

北海道のニセコでは、世界目線でのリゾート開発が行われた結果、冬季においては、町の全世帯数に占める外国人世帯の割合が15%前後まで増加しました。

日本海から吹き抜ける北風が「アンヌプリ」を越えることで、水分のない雪が積もるという地理的な特徴があります。
こうした地理的な優位性はもちろん、街をあげたインバウンド受け入れの努力によって、ニセコは世界的リゾートとして認知を広げました。

香川県 直島

瀬戸内海の直島では、現代アートというイメージが発信力を強化し、瀬戸内の景色等とともに SNS 等で拡散されている。この結果、来場者数はかつては年間1万人程度であったが、75 万人以上(2019 年)まで増加しました。

盆栽

欧州を中心に「BONSAI」として認知されており、盆栽協会の設立、複数の盆栽雑誌の刊行、専門学校の設立等、現地に盆栽文化が根付いています。展覧会での出展や海外でも日本庭園が広がったことが人気に繋がったと言われています。

クール・ジャパンの課題

クールジャパンには、まだまだ様々な課題が残っています。
令和元年に、知的財産戦略本部が公開した「クール・ジャパン戦略」には主に3つの課題が挙げられています。

クール・ジャパンの目的が共有されていない

そもそもの クールジャパンの着眼点や狙い、目指すものについての認識が十分に共有されていないことが、多くの問題を招く根底にあるといわれています。

クールジャパン は、日本の様々な特徴に世界の共感を得ることを通じ、日本のブランド力を高めるとともに、日本に関心を持ち、日本の伝統や文化などを理解し、尊重し、日本への愛情を有する外国人(日本ファン)を増やすことを目指す取り組みです。
クールジャパンの狙いや着眼点について、日本自体へのポジティブなインパクト(効果)を含めて認識を共有する必要があります。

プロダクトアウトになっている

日本人が日本人の目線でいいと思うものを世界に売り込もうという"プロダクトアウト"の活動がまだまだ多いといえます。
世界の人々の目線を起点とした"マーケットイン"の活動は少なく、魅力の深掘り、関係者の連携、発信など様々な場面における問題につながっています。

世界の目線と日本人の目線の相違を理解し、意識する必要があり、世界の人々の大きな関心の移り変わりや、市場・業界に関する基礎的なデータを収集し、分析し、広く共有する必要があります。

前述した北海道ニセコでは、徹底した”マーケットイン”を行い、成功に繋がったと言われています。

連携が取れていない

日本の魅力を世界に発信することが重要ですが、ストーリーの活用は、発信面でも関係者間の連携がうまく出来ていないといわれています。
また、デジタル化による、情報発信手段を含めた社会様相の変化に十分対応した発信ができていない状況もあります。

外国人の多くは、「食」や「アニメ」などの具体的なコンテンツを「入り口」として日本に関心を抱き、それらの背景にある「日本的な何か」に共感し、日本への愛情を育んでいます。
「アニメ」などに限らない広い間口を維持し、拡大しながら、日本に関心を持った人たちに「深み」を見せていくことでより関心を高めることができるのは、日本の強みであり、それらを活かすことが クール・ジャパンの持続性を確保する上では欠かせません。

5年ぶりに改定!これからどうなるのか

2024年6月4日に総理官邸で行われた知的財産戦略本部の会議での「新たなクールジャパン戦略(案)」をもとに、強化される今後の取組について解説いたします。

インバウンドはコロナ禍から2,500万人規模に回復し、そのうちリピーターが2,000万人超(2019年)となっています。
訪日外国人のリピーター増加を背景に、様々な体験価値化やラグジュアリーの強化による高付加価値化、イノベーションが重要とされています。

体験価値化・高付加価値化を進める

地域等における高付加価値の体験型サービスの開発の支援、国際水準の価格で収益を獲得できる仕組みの構築

価値訴求による市場の新規開拓・拡大を図る

サステナブルや健康志向などの価値観の訴求・発信の拡大

デザイン・アート機能※を強化する

国際的なアートフェア・オークションの国内誘致の強化


※ 顧客体験の質の向上、コンテンツの非連続の価値の向上

イノベーション/人材育成を強化する

テクノロジーの活用、新規参入/スタートアップ支援、 ビジネスデザイン・ガイド・DX等の人材育成の強化

国際的な政治・経済情勢リスクに対応する

新たな輸出エリアの開拓や高付加価値化による多角化

日本ファン拡大のため海外への発信力を強化する

日本ファンについての定点観測、 「トップセールス」による発信、大阪・関西万博での発信

世界共通語である「サスティナブル」に加え、「オーセンティック」や「トランスフォーマティブ」「ウェルビーイング」といった意識や考え方も重視されてきています。
日本に多数あるこれらの価値を、どのようにデザインするかというブランド戦略も求められています。

このほか、鉄鋼産業の輸出に匹敵し、半導体産業の輸出に迫る規模となっているアニメ・ゲームなどの「コンテンツ産業」については、国際競争できる制作費・利益の確保、クリエイターへの収益還元と自律的な活動環境の確保、海外展開のビジネス人材確保、海賊版対策の強化等に向けた取り組みを強化する方針が固められました。

私たちに求められること

クール・ジャパンの取り組みや、クール・ジャパン機構については、たくさんの批判的意見もありますが、少子高齢化による国内需要の縮小や国際競争力の強化に対応するためには、海外に「日本の良さ」を発信することが重要であることは変わりません。

これから観光産業が日本での非常に重要な基幹産業となってきます。
私たち観光業に関わる人間に、広い視点と高いマーケティングスキル等を身につけて、日本の素晴らしい価値を戦略的に海外に発信して「日本ファン」を作っていくことが期待されています。

クールジャパン政策について、考えさせられた書籍

※観光ONEでは、情報の提供を目的としており、公平性を心がけて執筆しています。
特定の国、組織、政策、または個人を擁護したり、批判したりする意図は一切ありません。
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  • この記事を書いた人

上野 颯

添乗員・観光イベントの企画者

1998年 愛知県一宮市生まれ、岐阜市育ち
中学生で最年少岐阜市まちなか案内人デビュー
2017年に地元の旅行会社に入社。
カリスマ添乗員・平田さんに学びながら、ツアーの企画・添乗に従事。
2019年には「添乗員上野と行くツアー」初企画
2020年に、コロナ禍で旅行予約が0になったことを機に、観光DXの重要性を感じ、IT技術を広く習得
2023年、株式会社aini-kuを設立。
公立高校 商業科(観光ビジネス)臨時講師、観光コンテンツの企画、バスツアーの企画などを行っています。

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