2024年10月の訪日外国人旅行者数(推計値)は2019年比32.7%増の331万2000人となり、単月での過去最高を更新しました。
新型コロナウイルス感染症が5類に移行して以降、インバウンド市場はコロナ前を上回る勢いで急成長しています。
コロナ前は「中国人観光客の増加」や「爆買い」などがメディアで大きく報道されていました。
しかしコロナ禍以降、中国人観光客数はコロナ前よりも減少し、メディアでの報道も少なくなっています。
一体なぜ少なくなったのか?そして、これからの見通しは?など「中国人観光客の特徴」について、世界一分かりやすく解説していきます。
この記事だけ読めばOK!というくらいに網羅していきますので、ぜひ最後までご覧ください!
日本に来ている中国人観光客の実態とは?
まずは、中国人観光客の訪日状況についてまとめてみます!
・2024年の中国人観光客数は約700万人(予測値)であり、世界全体で第2位となっている。この数字は、コロナ禍以前の7割程度となっている
・観光客の年代は20代〜30代、性別は女性が多い
・日本滞在中の消費額が高く、1人あたり「268,655円」となっている
・家族や友人との旅行が多いが、近年は女性一人旅も増加している
・2024年7月にビザの制限が緩和されたことで、今後は中間層の増加も期待されている
・中国では、Googleなど海外検索エンジンの利用が制限されているため、百度などが使用されている
・SNSや自国の親族・知人など、SNSや口コミを重視した情報収集が多い
訪日観光客数
コロナ禍では中国のゼロコロナ政策により厳しい移動制限が続き、中国人観光客の訪日数は激減しました。
また中国は、コロナ政策が解除された時期が最も遅い大きな国であったこともあり、訪日観光客の戻りが遅くなりました。
訪日観光客の減少には、コロナ政策のほかにも、原発処理水海洋放出の影響や中国国内の不動産バブル崩壊による不況などの経済的理由、国際情勢など、さまざまな要因が影響しています。
2024年7月には77万6千人訪れるまでに回復しましたが、いまだコロナ禍前の7割程度となっています。
ちなみに2019年に訪れた中国人観光客は960万人にのぼり、国別ランキングで1位となっていました。
滞在日数
中国人観光客の滞在日数は、中〜長期滞在が主流です。
短期では都市観光やショッピングを中心に、長期滞在では地方観光やテーマ性のある旅行が人気です。
多様な目的地を巡る旅行スタイルが特徴で、地方都市の観光資源への関心も高まっています。
男女比・年齢比
中国人観光客の旅行者属性は男性よりも女性が多く、特に1980年代・90年代生まれが全体の75%を超えています。
この層はSNSや口コミの影響を受けやすく、観光地やショッピング、体験型アクティビティに高い関心を持っています。
来訪回数
1人あたりの旅行支出
日本を訪れる中国人観光客は、日本滞在中の消費単価が高いことが特徴です。
かつてよくメディアで報道された「爆買い」のイメージが強い方も多いかもしれません。
実際、買い物を目的として日本に訪れる中国人観光客は多く、その消費額は注目されてきました。
しかし、「中国人観光客は、なぜそれほどまでにお金を持っているのか」という疑問も浮かぶところです。
その理由は、以前、中国の個人観光ビザの発給条件が厳しく、年収50万元(約1,000万円)以上の富裕層に限定されていたためです。
このため、主に高所得者層が日本を訪れ、消費を行っていたのです。
その後、条件が緩和され、年収25万元(約515万円)以上の層にまで対象が広がり、訪日観光客が増加しました。
さらに、2024年7月には個人観光ビザの発給条件が大幅に緩和され、年収10万元(約206万円)以上の人々まで対象が引き下げられました。
この変更により、これまでよりも格段に多くの人々がビザを取得できるようになり、約1600万世帯が新たに対象となりました。
この緩和策は、訪日観光の活性化や消費拡大を目的としており、特に中国の中間層をターゲットにした観光需要の拡大が期待されています。
※日本円は、2024年12月現在のレートを参考にしています。
個人観光ビザを取得できない所得の層は日本観光は出来ないのでしょうか?
例えば、団体観光ビザを利用すれば、所得に関係なく旅行会社を通じて日本を訪れることができます。
団体ツアーは比較的条件が緩やかで、旅行費用を一括で支払う形が一般的です。
また、ビジネスビザや親族訪問ビザなど、観光以外の目的で訪日する方法もあります。
同行者
日本に観光・レジャー目的で訪れる中国人観光客では、近年「ひとり旅」が増えています。
「ひとり旅」では、主に高い教育を受けた女性で多く、文化的に豊かな体験を求めるデジタルに精通した旅行者という新たな層となります。
旅行形態
中国人観光客は、急速に個人旅行(FIT)化が進んでいます。
2019年10-12月時点では約3割ほどあった団体ツアーへの参加割合が激減して、今では90%以上が個人旅行となっています。
これには、次のような要因が考えられます。
1.コロナ禍以降の意識の変化
個人旅行は感染リスクが低く、観光地での密を避けることができるため、コロナ禍で中国政府もこの方向を支援しました。
日本国内でも、各観光地でオンラインでの旅行予約や地域ごとの観光促進にも力を入れるようになったことも、個人旅行者の増加に繋がっていると考えられます。
2.ビザ条件の緩和と個人旅行の増加
前述したように個人観光ビザの条件が緩和され、年収基準が大幅に引き下げられたことで、富裕層以外の層にも個人旅行が普及しました。
団体ツアーに比べて、個人旅行は自由度が高く、旅程や訪れる場所を自分で選べるため、特に若い層や中間層の観光客に人気があります。
3.中国政府による団体旅行の規制
中国政府は、新型コロナウイルス感染拡大防止のために団体旅行の制限を行い、その結果、団体ツアーの数が大幅に減少しました。
この影響で、団体旅行の形態が縮小し、個人旅行(FIT)や少人数グループ旅行が増加しました。
人気観光地
人気のお土産
食料品・飲料品は、安全性や品質の高さから自国への持ち帰り需要が高く、化粧品や医薬品も同様に効果や信頼性で選ばれています。
これらの商品は日本の技術力やブランド力を象徴しており、訪日観光の消費動向において重要な位置を占めています。
なかでも人気商品として有名なのが、「龍角散」(株式会社龍角散)です。
新型コロナもあって需要が急拡大したため、製造元である株式会社龍角散が約10億円を投資して増産をしたほどです。
中国国内では、現在でも、偽物商品が出るほどの人気となっています。
その他にも、化粧品では「雪肌精」(株式会社コーセー)も安定の人気があります。
特に、実用的でありながら品質が高い製品が好まれる点が、中国人観光客の購買行動の特徴と言えます。
空港の利用数ランキング
中国でよく使われている検索エンジン
中国でよく使われる検索エンジンは百度(Baidu)です。
百度は中国国内でのシェアが最も高く、Googleのように多機能で、ウェブ検索だけでなく地図や画像、動画などのサービスを提供しています。
中国政府のインターネット規制の影響で、Googleなどの海外検索エンジンは利用が制限されているため、中国国内では百度が主流となっています。
(ただしBingはアメリカの会社ですが、使用できるようです)
中国でよく使われているSNS
WeChat(微信)はメッセージや決済機能に加え、ミニプログラムや公式アカウント機能を備えたオールインワンアプリで、中国で最も広く利用されています。
また、Weibo(微博)は情報拡散に優れた中国版Twitterとして人気です。
TikTokは国際版のアプリで、中国国内ではDouyin(抖音)の名で親しまれ、EC機能やローカルサービスも充実しており、幅広い層に支持されています。
出発前の情報源ランキング
中国人観光客は多様な情報源を活用し、デジタルと人間関係の双方を重視している点が特徴です。
旅行会社のウェブサイトやSNSは最新の観光情報を得る手段として利用され、親族や知人の口コミは信頼性の高い情報として選択に影響を与えます。
また、個人ブログは具体的でリアルな体験談を提供し、観光計画の重要な参考となります。
特に個人旅行(FIT)が増えている現在は、SNSや個人ブログ、周りの口コミが大多数を占めていると考えられます。
中国の歴史・特徴
名称 | 中国/China |
人口 | 14.1億人 (2023年) |
言語 | 中国語(標準語:普通話/プートンファー)ほか |
日本との時差 | -1時間 |
1人あたりのGDP | 1万2,718米ドル |
訪日客数 | 約594万人(第2位) |
学校の長期休暇 | 7月中旬〜8月末の約40〜50日間の夏季休暇 1月下旬〜2月中旬の約20〜30日間の冬季休暇(春節休暇を含む) 春節(旧正月/1月下旬〜2月中旬)という1週間程度の祝日があり、この期間は訪日観光客増加になる。 |
訪日旅行のピーク | 1月(74万人)、2月(79万人) |
フライト時間 | 約3時間〜4時間程度 |
中国と日本の繋がり
中国と日本のつながりは、歴史的・文化的な交流を通じて築かれてきました。古代には遣唐使が中国から先進的な文化や技術を持ち帰り、日本の発展に大きく寄与しました。その後も仏教や書道、建築などで中国文化の影響を受け続けています。
「観光」という産業で見ると、中国人の本格的な訪日観光は2000年の観光査証の解禁により始まりました。
その後、経済成長や個人観光ビザの条件緩和に伴い、訪日中国人観光客の数は急速に増加しました。
特に「爆買い」が象徴するように、消費力の高さが注目され、観光市場で重要な存在となりました。
現在では買い物だけでなく、文化体験や自然観光を求める旅行者も増え、多様なニーズに応える観光資源の充実が求められています。
中国人観光客の特徴
中国人観光客は、購買力の高さやグルメ、観光地巡りへの関心の強さが特徴です。
近年では個人旅行の増加により、従来の団体旅行から脱却し、より多様で質の高い旅行を求める傾向があります。
また、SNSや口コミを活用し、観光情報を精力的に収集する点も注目すべき点です。
一方で、一部の観光客によるマナー違反や大人数での行動が目立ったため、悪い印象を抱く人もいます。
私たち観光事業者としては、文化の違いを前提にした情報提供や、マナー啓発の場を設けることで、誤解を防ぎ、より良い関係を築く努力が必要となります。
一部のケースを全体に当てはめず、良い行動を示す観光客を積極的に評価・共有することで、ポジティブな変化を促すアプローチも重要になります。
訪日中国人の特徴を掴んでいこう!
訪日中国人観光客には幅広い世代が含まれており、特に中間層の増加により、これからが期待される重要市場です。
リピーターとなることで、観光地だけでなく、文化体験や地元の暮らしに興味を持つ傾向が強まり、「地方」への訪問が増える可能性があります。
さらに、買い物目的だけでなく「質」や「ストーリー」を重視する消費者も多いため、地域の特産品に付加価値を持たせる取り組みが、新たな需要を引き出す鍵となります。
「外国人は”非日常”を楽しみに訪日する」
その”非日常”には、日本の伝統的な文化だけでなく、日本人には当たり前の文化も含まれています。
自分の地域に、外国人にとってどんな”非日常”があるのか。
それが、「行きたい!」と思うほど強い欲求を生み出すものか。
を考えていく必要があります。
そのためには、ターゲットとなる人のニーズや特徴を正しく把握することが必要です。
当サイトでは、外国人観光客の気持ちをしっかり掴むインバウンドビジネスの参考になる様々な調査を、今後も行ってまいります。