2024年の訪日外国人観光客数は、3,310万人(前年比131.3%)と推計されており、急激に伸びているインバウンド市場。
しかし、「観光消費額」という観点では、まだまだ課題が残っています。
「観光消費額」の増加には、ナイトタイムエコノミーを活性化することによる消費機会の拡大が重要であると言われています。
外国人観光客が日本で感じた不満の上位に「夜のコンテンツがない」ことが挙げられているためです。
この記事では、日本に先駆けている世界のナイトエコノミー成功事例を、
観光ONEが提唱する「ナイトタイムエコノミー4パターン」を活用しながら、分かりやすく解説していきます!
【観光ONE流 ナイトタイムエコノミー 4つのパターン】
・既存の観光資源を「夜」へ軸ずらし
(ルーブル美術館 ナイトツアー、ウブド ナイトライスフィールドツアーなど)
・もともとあるナイトコンテンツ+aを考える
(タイムズスクエア再開発、チャオプラヤ川ナイトクルーズなど)
・この地域だからこそ味わえる、夜のコンテンツを見つける
(トロムソのオーロラ観賞、グレート・スモーキー山脈のホタル乱舞など)
・全く新しいナイトコンテンツを0から作り出す【難易度大】
ナイトコンテンツの造成には、治安や地域住民の理解などの課題もたくさんあります。
世界がどのようにして、これらの課題と向き合ってきたのかも紹介していきます!
国内事例はこちらの記事をご覧ください ↓
ナイトタイムエコノミーとは?
ナイトタイムエコノミーとは、夜間の経済活動を活性化させる取り組みのことを指します。
観光業においては、夕方から深夜にかけて行われる文化体験、飲食、ショッピング、エンターテイメントなどが該当します。
ナイトタイムエコノミーの推進は、日本の観光立国としての目標達成に寄与し、地域の経済効果を高めると同時に、観光客の滞在期間の延長や消費額の増加が期待されています。
外国人は夜の消費に困っている
日本政策投資銀行と日本交通公社が実施したインバウンドの意向調査によると、訪日旅行での不満な内容としてナイトライフが40位中6位に挙がっており、外国人観光客の「ナイトタイムの不満」は大きいことが分かっています。
世界に目を向けると、イギリスやニューヨークを中心に、ナイトタイムエコノミーが活発になることで、高い経済効果や多くの雇用が生まれている事例が多くあります。
こうしたことから、日本においても「夜の時間」を活用することで、消費機会の拡大に繋がり、外国人観光客の満足度や消費額の増加だけでなく、日本全体の経済効果が高まることが期待されています。
ナイトタイムエコノミーのメリット・デメリット
ナイトタイムエコノミーを推進する前に、ナイトタイムエコノミーの良い点と悪い点を把握しておきましょう。
ナイトタイムエコノミーのメリット
【メリット】観光客の滞在時間と消費額の増加
夜間の活動が増えることで観光客の滞在時間が延び、飲食・交通・宿泊などでの消費が促進されます。昼夜を通じた観光が可能になり、観光収入の拡大が期待されます。
【メリット】地域経済と雇用の活性化
ナイトタイムエコノミーが拡大することで、地域の飲食店やエンターテインメント施設の利用が増え、雇用機会も創出されます。
特に過疎地域や地方都市では、夜間の経済活動が地域振興につながる可能性があります。
【メリット】観光コンテンツの多様化と魅力アップ
夜間ならではのライトアップ、ナイトクルーズ、ナイトミュージアムなど、昼間には味わえない体験を提供できるため、観光の選択肢が増え、観光地としての魅力も高まります。
ナイトタイムエコノミーのデメリット
【デメリット】治安維持の問題
夜間の活動が増えることで、治安の悪化が懸念されます。
観光客のトラブルや飲酒関連の問題が発生する可能性があり、地域全体での安全対策が求められます。
【デメリット】住民の生活環境への影響
夜間の観光が活発化することで、騒音や人の流れが増え、地域住民の生活環境に影響を与える可能性があります。
地域住民との合意形成や騒音対策が重要です。
【デメリット】運営コストの増大
夜間営業には照明や警備などの運営コストがかかり、負担が増加する場合があります。
特に公共インフラや観光施設の夜間運営は、自治体や施設の費用負担が大きくなる可能性があります。
海外の事例から読み解く、”成功法則”
それでは、海外のナイトタイムエコノミー事例を見てみましょう。
事例を紹介するにあたり、当サイトにて提唱しいる「ナイトタイムエコノミー4つのパターン」をもとにカテゴリー分けをしています。
ナイトタイムエコノミーの範囲は広く、どこまでを含め、何を持って成功とするかというのが難しい分野です。
ここでは、「観光」という視点で、個人的に成功事例と考えるものをピックアップいたします。
1つずつ事例をもとに、解説していきます!
既存の観光資源を「夜」へ軸ずらし
まず最初に、既存の観光資源を「夜」へ軸ずらしするパターンです。
日中に訪れることが一般的な観光資源を「夜」の時間帯に変えることで、新たな魅力を生み出します。
ルーブル美術館 ナイトツアー(フランス)
世界でもっとも有名な美術館と言われるルーブル美術館は、入場者数も世界一です。2018年の来館者数は約1,020万人で、過去最高を記録しました。
そんなルーブル美術館は、あえて「夜」の時間を活用することで、昼間より空いている館内で名だたる作品を鑑賞できるナイトツアーを実施しています。
また、水曜日と金曜日のみ午後9時まで営業を延長しています。(通常は午後6時)
特定日のみ夜間営業をするということで、混雑を緩和し、より落ち着いた雰囲気で芸術作品を楽しむことができます。
この政策は、地元の方や仕事終わりの方への配慮にも繋がっています。
-
https://www.louvre.fr/visiter/horaires-tarifs
www.louvre.fr
ウブド ナイトライスフィールドツアー(バリ島/インドネシア)
「ウブド ナイトライスフィールドツアー」は、バリ島ウブドの美しいライステラスを夜間に楽しむツアーです。
夜特有の静寂な雰囲気の中で、星空や月明かりに照らされた田んぼの景色を散策します。
ナイトツアーでは、昼間とは異なる幻想的な風景が広がり、自然や文化を一層感じられるため、観光客から人気になっています。
-
From Bali: Night Fireflies Tour & Balinese cultures insights | GetYourGuide
Discover the magical sparkling fireflies in rural life and learn the authentic Balinese culture crea ...
www.getyourguide.com
もともとあるナイトコンテンツ+aを考える
2つ目は、もともとあるナイトコンテンツ+aのパターンです。
すでに地域にあるナイトコンテンツを磨きをかけることで、さらなる消費額と滞在時間の増加に繋げます。
タイムズスクエアの再開発(ニューヨーク/アメリカ)
ニューヨークのタイムズスクエアは、もともと夜間の賑わいで知られていますが、近年、さらに魅力を高めるための再開発が行われました。
LEDスクリーンの大規模な導入や、夜間の歩行者専用区域の設置が行われ、昼夜を問わず観光客を引きつけるエンターテイメントの中心地として進化しました。
この再開発は、現在進行形で行われており、タイムズスクエアの大晦日カウントダウンでも有名なOne Times Squareビルの改修は、2025年に完成予定となっています。
この改修工事には、約5億ドルが投じられています。
既存のナイトコンテンツをより良くする事例と言えます。
この地域だからこそ味わえる、夜のコンテンツを見つける
3つ目は、この地域だからこそ味わえる、夜のコンテンツを見つけるパターンです。
地元住民にとっては当たり前(いつでも見れるようなもの)でも、観光客にとっては非日常の風景かもしれません。
トロムソのオーロラ観賞(ノルウェー)
トロムソは「北極のゲートウェイ」として知られ、オーロラ観賞の名所となっています。
特に9月から4月の間が観賞に適しており、犬ぞりやボートツアーなど、様々なアクティビティを楽しみながらオーロラを観賞できる人気の名所です。
オーロラ鑑賞は、ノルウェーのトロムソだけでなく、アイスランドやアラスカ、アメリカ、スウェーデンなどでも楽しむことができます。
貴重な自然環境を生かした「この地域だからこそ味わえる、夜のコンテンツを見つける」の代表的な事例と言えます。
グレート・スモーキー山脈のホタル乱舞(アメリカ)
アメリカのグレートスモーキー山脈には、特に同調するホタル(Photinus carolinus)が生息しており、毎年春の終わりに行われる壮大な光のショーが観察できます。この現象は、ホタルたちが一斉に点滅することで知られ、非常に珍しいものです。
通常、ホタルは個別に点滅しますが、この種のホタルは、特定の時期に集団でまったく同じタイミングで点滅する現象が観察されます。
この同調した点滅は、交尾行動と関連していると考えられており、オスが飛び回りながら点滅し、メスがその点滅に応じて静止している姿が見られます。
まさに、貴重な自然環境を生かした「この地域だからこそ味わえる、夜のコンテンツを見つける」の成功例です。
全く新しいナイトコンテンツを0から生み出す【難易度大】
最後は、全く新しいナイトコンテンツを0から作り出すパターンです。
大きな予算がかかるケースが多いため、他のパターンと比較して難易度が高くなります。
フリーモント・ストリート・エクスペリエンス(アメリカ)
ラスベガスの一角を、夜間に大規模なライトショーとエンターテイメントイベントを提供することで、ナイトタイムエコノミーの中心地として生まれ変わらせた事例です。
当時業績が好ましくなかったダウンタウンにあるギャンブルの地域に多くの人々を呼び込む方法の一つとして、1995年に大規模なLEDスクリーンを備えたフリーモント・ストリート・エクスペリエンスを設置し、夜のライトショーや音楽イベントを展開しました。
これにより、観光客を呼び戻し、地域のナイトタイムエコノミーを活性化に繋がりました。
多くの課題は、世界ですでに解決されている
ナイトタイムエコノミーは、問題視されている「オーバーツーリズム」解消の一助になるかもしれません。
世界各地で観光客の集中による負担が課題となっていますが、夜間の観光資源を活用することで、観光客を昼夜に分散させ、地域全体の活性化が期待されています。
例えば、夜のツアーやイベントを導入することで、観光客の分散に繋がる上、新たな雇用や収益が生まれ、観光業における持続可能な発展に繋がるでしょう。
多くの課題は、すでに世界で解決が進んでいます。
観光ONEでは、「観光を、もっと面白く」をテーマに、国内外の成功事例を中心に観光産業の発展に役立つ情報を発信しています。
ほかの記事もご覧いただけましたら幸いです。
国内のナイトタイムエコノミー事例はこちら ↓
地域観光に関する情報も発信しています