2016年の風営法改正から注目が高まり続ける「ナイトタイムエコノミー」
先進地と言われるロンドンでは、経済規模が日本円で7兆円超えとも言われています。
「ナイトタイムエコノミーに取り組んでいきたいけど、何ができるのかわからない」
「自分の地域で、夜のコンテンツを作ることができるのだろうか」
という観光事業者も多いかと思います。
そこで私は、観光地における「ナイトタイムエコノミー」成功の共通点を独自に分析し、4つに分類いたしました。
この記事では、ナイトタイムエコノミーの4分類を、国内事例を中心に紹介しながら、とにかく分かりやすく解説いたします!
記事では紹介しきれないほど様々な取り組みを参考に、分析を行いました。
【観光ONE流 ナイトタイムエコノミー 4つのパターン】
・既存の観光資源を「夜」へ軸ずらし
(ナイトサファリ、富士山周辺ナイトハイキングなど)
・もともとあるナイトコンテンツ+aを考える
(水戸市スナックナイトツアーなど)
・この地域だからこそ味わえる、夜のコンテンツを見つける
(日本一の星空・四日市の工場夜景など)
・全く新しいナイトコンテンツを0から作り出す【難易度大】
ナイトタイムエコノミーとは?
ナイトタイムエコノミーとは、夕方から深夜までの時間帯を活用した経済活動のことを指します。
これは、通常の観光や経済活動が昼間に集中しているのに対し、夜の時間帯に観光資源やサービスを提供し、観光客や地元住民の消費を促進する取り組みです。
ナイトマーケット、ライトアップイベント、ナイトミュージアム、夜間アート展示やパフォーマンス、ナイトクルーズなど、夜ならではの体験が含まれます。
2016年の風営法改正で注目が高まった
2016年の風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)の改正は、観光業界に新しい可能性をもたらし、ナイトタイムエコノミーへの注目が高まりました。
この改正により、それまで風営法の規制対象だった深夜営業のダンスクラブなどが、一定の基準を満たせば深夜でも営業が可能となりました。
特に都市部での夜間の娯楽や観光活動が活発化し、観光業界が夜の時間帯を活用した「ナイトタイムエコノミー」に力を入れる動きが進展しました。
ナイトタイムエコノミーのメリット・デメリットを解説
ナイトタイムエコノミーには良い点と悪い点があります。
まずは簡単に把握しておきましょう。
ナイトタイムエコノミーのメリット
【メリット】観光客の滞在時間と消費額の増加
夜間の活動が増えることで観光客の滞在時間が延び、飲食・交通・宿泊などでの消費が促進されます。昼夜を通じた観光が可能になり、観光収入の拡大が期待されます。
【メリット】地域経済と雇用の活性化
ナイトタイムエコノミーが拡大することで、地域の飲食店やエンターテインメント施設の利用が増え、雇用機会も創出されます。
特に過疎地域や地方都市では、夜間の経済活動が地域振興につながる可能性があります。
【メリット】観光コンテンツの多様化と魅力アップ
夜間ならではのライトアップ、ナイトクルーズ、ナイトミュージアムなど、昼間には味わえない体験を提供できるため、観光の選択肢が増え、観光地としての魅力も高まります。
ナイトタイムの充実化は、観光客の宿泊にも繋がります
ナイトタイムエコノミーのデメリット
【デメリット】治安維持の課題
夜間の活動が増えることで、治安の悪化が懸念されます。
観光客のトラブルや飲酒関連の問題が発生する可能性があり、地域全体での安全対策が求められます。
【デメリット】住民の生活環境への影響
夜間の観光が活発化することで、騒音や人の流れが増え、地域住民の生活環境に影響を与える可能性があります。
地域住民との合意形成や騒音対策が重要です。
【デメリット】運営コストの増大
夜間営業には照明や警備などの運営コストがかかり、負担が増加する場合があります。
特に公共インフラや観光施設の夜間運営は、自治体や施設の費用負担が大きくなる可能性があります。
価格設定やマネタイズを事前にしっかり考えておく必要があります。
国内の成功事例から読み解く"4つのパターン"
ナイトタイムコンテンツを創出したいと考えてはいるけど、どんな取り組みをしていくべきかわからない。という声も多くいただきます。
そこで、私が国内外のナイトタイムエコノミー成功事例を分析してたどり着いた「4つのパターン」を紹介いたします。
この「4つのパターン」をもとに、アイデアを出してみてください。
アイデアが思いついたら、前述のメリットやデメリットも含めて、実現可能性について議論してみましょう。
ナイトタイムエコノミーの範囲は広く、どこまでを含め、何を持って成功とするかというのが難しい分野です。
ここでは、「観光」という視点で、個人的に成功事例と考えるものをピックアップいたします。
1つずつ事例をもとに、解説していきます!
【パターン1】既存の観光資源を「夜」へ軸ずらし
まずは、「昼」に訪れることが一般的な観光資源を「夜」に軸ずらしすることで成功したケースです。
具体的には、次のような成功例があります。
【静岡県】サファリパーク「ナイトサファリ」
ナイトサファリは、ナイトタイムエコノミー「既存の観光資源を「夜」へ軸ずらし」の成功例といえます。
日本国内におけるナイトサファリは、1980年代に富士サファリパークで初めて導入されたとされています。
これ以降、那須サファリパークや群馬サファリパークなど複数の施設が同様の夜間ツアーを開始し、動物たちの夜の姿を観察できる特別な体験として定番化していきました。
暗闇の中で活動する動物たちの観察を楽しめるナイトサファリは、昼のコンテンツを「夜ならではの体験」に置き換えた素晴らしい発想です。
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ナイトサファリ - 富士サファリパーク 公式サイト
涼しくなる夕方から夜にかけて、夜行性のライオンやトラなどの肉食獣はたいへん活動的です。昼間とは異なる、夜の富士サファリパークをお楽しみください!
www.fujisafari.co.jp
日中に混雑する観光施設では、このパターンを活用することで、混雑を緩和することでも出来ます。
【山梨県】富士山周辺「ナイトハイキング」
富士山のナイトハイキングも、ナイトタイムエコノミー「既存の観光資源を「夜」へ軸ずらし」の成功例といえます。
このナイトハイキングでは、満点の星空と山の静寂の中、専属ガイドの案内で夜行性の動植物に触れたり、途中でライトなしの暗闇の中を歩く独特の体験が人気です。
昼間は混雑する富士山観光を避けて夜に訪れる観光客が増え、周辺の宿泊施設や飲食店の利用促進に繋がっています。
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www.asoview.com
【パターン2】もともとあるナイトコンテンツ+aを考える
このパターンは、すでに地域にナイトコンテンツがある場合に有効です。
一般的に、新たなナイトコンテンツを考えるのではなく、既存の資源を活用して、消費額や滞在時間を増加出来ないかを検討する方が早いです。
これには、新たな観光客を呼び込む方法と、既に訪れている観光客の消費額をアップする方法の2つがあります。
【茨城県】スナックナイトツアーin大工町
茨城県水戸市の大工町にて2024年2月下旬〜3月に開催されたのが、「スナックナイトツアー」です。
水戸市の大工町は居酒屋やバーなど様々な飲食店をはじめ、約100軒のスナックが存在する茨城県を代表する歓楽街を活かした、「もともとあるナイトコンテンツ+aを考える」パターンの成功例といえます。
水戸市では、東京から日帰りでの観光が可能なことや偕楽園周辺地域の回遊性の低さなどからナイトタイムエコノミーの活性化が課題となっていました。
このイベントは、偕楽園で毎年開催される「梅まつり」に合わせて行われました。
つまり、新たな観光客を呼び込む方法と、既に訪れている観光客にの消費額をアップする方法の2つのうち、「既に訪れている観光客の消費額をアップする」にあたると言えます。
お酒を伴うナイトコンテンツは、宿泊に繋がりやすいというメリットがあります。
ただし、地域の治安維持とのバランスを考えて造成する必要があります。
【パターン3】この地域だからこそ味わえる、夜のコンテンツを見つける
【長野県】ヘブンスそのはら 日本一の星空「天空の楽園」
天空の楽園 ナイトツアーは、ナイトタイムエコノミー「この地域だからこそ味わえる、夜のコンテンツを見つける」の成功例といえます。
このツアーは、地域住民が協力し、これまで活用されていなかった「星空の美しさ」を戦略的に観光地として開発した事例です。
標高の高い場所での夜空観察を楽しむツアーは、昼間とは異なる特別な体験を提供し、星座解説や天体望遠鏡を用いた観賞が人気を集めています。
地元住民にとっては当たり前と感じていた日常を、「価値」に変えた素晴らしい取り組み例です。
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天空の楽園 日本一の星空ツアー | スタービレッジ阿智
シーズン通して楽しめる、長野県阿智村の天空の楽園・日本一の星空ツアー公式サイト。美しい星空を堪能できる2種類のツアー、イベント情報をご覧いただけます。日本一の星空を眺められる、特別な夜を演出いたします ...
sva.jp
「日本一の星空」を売り出すまでの苦労が分かる、神書籍
【三重県】四日市 工場夜景ツアー
三重県四日市市にある「四日市コンビナート夜景クルーズ」も、「この地域だからこそ味わえる、夜のコンテンツを見つける」パターンの成功事例です。
四日市コンビナートには三菱ケミカルやコスモ石油、東ソーにJSRなど、日本を代表する大手企業があるほか、多くの工場がそびえ立つこともあって、夜になると大型プラントや煙突が華麗に光り輝きます。
地元民にとっては日常の光景かもしれませんが、この工場夜景の美しさを活用して、クルーズの運行を開始したことで、大変な人気となっています。
クリスマスのシーズンには、工場クルーズに加えて、四日市ポートビルに登り、地上100メートルからの夜景鑑賞も出来るスペシャルプランを販売しています。
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夜景遺産 | 【公式】四日市コンビナート夜景クルーズ
夜景遺産認定!四日市コンビナート夜景クルーズの公式HPとなります。週末金曜・土曜・特定の日曜に運航。60分クルーズと大きい船での90分クルーズの運航があります。宿泊プランや食事セットプランもございます ...
www.ykyc.jp
地元住民にとっての日常を、一度疑ってみると、思わぬ発見に繋がるかもしれません。
【パターン4】全く新しいナイトコンテンツを0から作り出す【難易度大】
【長崎県】長崎ランタンフェスティバル
長崎ランタンフェスティバルは、「全く新しいナイトコンテンツを0から作り出す」の成功事例です。
長崎市が中心となり、地域住民や企業が協力してゼロから生み出した大規模イベントです。
当初は、中国の旧正月を祝う文化として小規模から始まりましたが、現在では、街全体を数万個のランタンで装飾するまでに成長しました。
多額の予算を投じ、エンターテインメントや飲食店の出店も増え、観光経済に大きく寄与しています。
今では国内外から訪れる観光客が多く、地域の冬の目玉イベントとして定着しています。
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長崎ランタンフェスティバル | 長崎市公式観光サイト「travel nagasaki」
長崎市が運営する公式観光サイト「travel nagasaki」。「長崎ランタンフェスティバル」の公式情報はこちらから。点灯式やスケジュール、イベント内容など最新情報をご案内します。
www.at-nagasaki.jp
【神奈川県】カワサキ ハロウィン ※2020年まで
「川崎ハロウィン」は、神奈川県川崎市で10月の最終週末に開催されていた、日本最大級のハロウィンイベントです。
川崎駅周辺が夜間を中心に仮装パレードやライブパフォーマンスで賑わい、特別な照明と音響により、街が幻想的なハロウィンの雰囲気に包まれます。
国内外から多くの仮装愛好者が集まり、観光客も増加。地域住民や地元企業の協力のもと、参加型イベントや飲食・ショッピングのスペシャルプランも用意され、川崎の夜を活性化する一大イベントとなりました。
近年の新型コロナウイルス感染拡大の影響や安全面への懸念から、現在は開催されていません。
最初から多額の費用がかかる場合が多いので、個人的には最終手段かなと思います
地域ならではの、ナイトコンテンツを考える
ナイトコンテンツの充実化は、宿泊客の増加や他地域との差別化につながり、観光消費額を増やす効果があります。
地域ならではの、ナイトコンテンツを作ることで、観光地の魅力を高めていきましょう!
海外での事例はこちらをご覧ください! ↓