観光行政

日本版ESTA(JESTA)とは?観光業界への影響と旅行会社・自治体・DMOが準備すべき8つのポイント

2026年7月20日

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日本版ESTA(JESTA)の導入は、単なる入国手続きの変更ではありません。
旅行会社、自治体、DMO、宿泊施設など、訪日外国人を受け入れる観光事業者にとっては、旅行者への案内方法や商品設計、トラブル対応を見直すきっかけになります。

本記事では、現時点で明らかになっている制度の方向性を整理したうえで、観光業界が今から準備すべきポイントを考えます。

日本版ESTA(JESTA)とは

日本版ESTA(JESTA:Japan Electronic System for Travel Authorization)は、ビザ(査証)が免除されている国・地域から日本へ渡航する外国人を対象に、渡航前にオンラインで事前審査を行う電子渡航認証制度です。
政府は、2028年度中の運用開始を目指して制度整備を進めており、2026年5月にはJESTAの創設を盛り込んだ改正入管法が成立しました。

現在、多くの国・地域の旅行者は短期滞在であればビザを取得せずに日本へ入国できます。JESTAの導入後は、対象となるビザ免除国からの旅行者は航空機や船に搭乗する前に、オンラインで必要事項を申請し、渡航認証を受けることが求められるようになります。

2026年7月時点。
運用は今後変わる場合があります。

これまでも、日本に到着してから入国できるかどうかを審査していました。
しかし、入国できない人がいた場合は、本国への送還手続きや対応に、多くの時間や費用がかかるケースもありました。
JESTAは、その確認を日本へ出発する前に行うことで、水際対策の強化と入国審査の効率化を目指す制度です。

2025年の外国人新規入国者数は過去最高の約3,918万人に達し、そのうち観光等を目的とする短期滞在者は約3,846万人でした。
さらにその約8割がビザ免除対象者であるため、JESTAの導入の影響はかなり大きいです。

参考:出入国在留管理庁 令和8年入管法改正


JESTAに関するよくあるご質問を、まとめて回答します!

入国審査がなくなるのですか?

いいえ。入国審査が「前倒し」されるイメージです。
JESTAは、入国審査そのものではありません。
旅行者の情報を出発前に確認する「一次チェック」の役割を果たし、日本到着後には従来どおり本人確認や最終的な入国審査が行われます。

なぜビザ免除国だけが対象なのですか?

ビザ取得時に、すでに事前審査を受けているからです。
ビザが必要な国・地域の旅行者は、日本大使館や領事館で渡航目的や滞在計画などの審査を受けています。
一方、ビザ免除国の旅行者は事前審査なしで日本へ渡航できるため、その代わりとしてJESTAによる事前認証が導入されます。

ビザとは何が違うのですか?

ビザは「入国資格を審査する制度」、JESTAは「ビザ免除者向けの事前確認制度」です。
そのため、ビザ対象国の旅行者は引き続きビザの取得が必要であり、JESTAは主にビザ免除国からの旅行者を対象としています。

日本だけが導入する制度なのですか?

いいえ。世界ではすでに一般的になりつつあります。
アメリカのESTAをはじめ、カナダ(eTA)、イギリス(ETA)、ニュージーランド(NZeTA)など、多くの国で電子渡航認証制度が導入されています。
日本版JESTAも、こうした国際的な流れを踏まえて整備が進められています。

観光業界にとって何が変わるのでしょうか?

これまでは予約後の案内や空港でのサポートが中心でしたが、JESTAの導入後は「渡航認証を取得しているか」の確認も必要になります。
旅行会社や自治体、DMOにとっては、旅行者との接点が出発前へ広がることが大きな変化と言えるでしょう。

日本版ESTAが観光業界に与える影響

日本版ESTA(JESTA)の導入によって、訪日旅行そのものが大きく変わるわけではありません。しかし、「ビザが不要だから気軽に行ける」というこれまでの訪日旅行のイメージには、少なからず変化が生まれる可能性があります。
これまでビザ免除国・地域の旅行者は、航空券や宿泊施設を予約すれば、比較的スムーズに日本を訪れることができました。一方、JESTAの導入後は、出発前にオンラインで渡航認証を取得するという新たな手続きが加わります。

申請自体は短時間で完了する仕組みになると考えられますが、「もう一つ手続きが必要」という事実は、旅行者の心理に少なからず影響を与えます。
特に、思い立って旅行を計画する人や、短期間の旅行を楽しむ人、初めて日本を訪れる人にとっては、小さなハードルとなる可能性があります。
一方で、日本を旅行先として強く希望している人やリピーターへの影響は限定的でしょう。そのため、日本版ESTAによって訪日外国人旅行者数が大幅に減少するとは考えにくいものの、「気軽な旅行先」としての魅力は、これまでより少しだけ変化する可能性があります。

観光業界として重要なのは、制度そのものを過度に心配することではありません。新たな手続きが加わっても、「日本旅行は簡単で安心」という印象を維持できるよう、分かりやすい情報発信や旅行者へのサポートを充実させることが、これまで以上に重要になるでしょう。

今から準備すべき8つのポイント

航空会社・船舶会社は渡航認証の確認体制を整備する

日本版ESTA(JESTA)の導入後は、ビザ免除国・地域から日本へ渡航する旅行者が、有効な渡航認証を取得しているかを確認することが求められます。
現在も航空会社や船舶会社は、旅客の氏名や旅券情報などを出入国在留管理庁へ事前に報告(事前旅客情報システム)していますが、JESTAの導入によって、出発前の確認業務はさらに重要になります。
認証を取得していない旅行者は、原則として日本行きの航空機や船舶へ搭乗できなくなるため、チェックイン時の確認方法やシステム連携、現場での案内体制などを事前に整備しておくことが重要です。
また、旅行会社やOTAとの情報共有を進め、旅行者への案内内容を統一することで、空港や港での混乱防止にもつながるでしょう。

対象者と申請条件を正確に案内できる体制をつくる

日本版ESTA(JESTA)の導入後は、旅行者から「自分は申請が必要なのか」「いつまでに申請すればよいのか」といった問い合わせが増えることが予想されます。
旅行会社や宿泊施設、自治体、DMOなどは、自社ホームページや予約確認メール、FAQなどで、対象となる旅行者や申請の流れを正確に案内できる体制を整えておくことが重要です。
制度の詳細は今後変更される可能性もあるため、独自の解釈で説明するのではなく、政府の公式情報へ誘導することも大切です。

予約から出発までの案内導線を見直す

日本版ESTAは、旅行者が出発前に必ず確認しなければならない手続きです。
そのため、予約完了時に一度案内するだけではなく、出発日が近づいたタイミングでもリマインドを行うなど、旅行者が認証を忘れない仕組みづくりが求められます。
例えば、予約確認メール、出発前メール、マイページのお知らせなど、旅行者が必ず目にするタイミングで情報を届けることで、認証漏れの防止につながります。

旅行会社は申請サポートの範囲を決める

旅行会社にとって大切なのは、「どこまでサポートするのか」を事前に明確にしておくことです。
申請方法を案内するのか、入力方法をサポートするのか、それとも旅行者自身で申請してもらうのかによって、業務負担や責任の範囲は大きく変わります。
特に高齢者や団体旅行ではサポートを求められる場面も想定されるため、社内で対応方針を統一し、スタッフへの周知を進めておくことが重要です。

認証漏れが発生した場合の対応を決める

どれだけ丁寧に案内しても、「申請を忘れていた」「認証が完了していなかった」というケースは一定数発生する可能性があります。
その際に誰が対応するのか、旅行者へどのように案内するのか、社内であらかじめフローを決めておくことが重要です。
旅行会社だけでなく、ランドオペレーターや添乗員、空港スタッフとの連携も含め、想定されるトラブルを事前に整理しておくことで、現場の混乱を最小限に抑えられるでしょう。

自治体・DMOは多言語での事前案内を準備する

自治体やDMOの公式観光サイトは、多くの外国人旅行者が旅行前に情報収集を行う重要な窓口です。
制度開始後は、「日本への渡航には事前認証が必要な場合があります」といった案内や、政府の公式サイトへのリンクを多言語で掲載することが求められます。
観光情報だけでなく、旅行者が安心して日本へ出発できる環境を整えることも、これからの観光情報発信の役割の一つと言えるでしょう。

偽サイト・高額な申請代行への注意喚起を行う

アメリカのESTAでは、公式サイトに似せた申請代行サイトや、高額な手数料を請求するサイトが数多く存在しています。
日本版ESTAでも同様の問題が発生する可能性があるため、旅行者には政府の公式サイトから申請するよう注意喚起することが重要です。
観光事業者が公式サイトへのリンクを分かりやすく掲載するだけでも、不要なトラブルを防ぐことにつながります。

ESTAでは、高額な申請代行サイトによるトラブルが発生しています。
JESTAでも同様の事例を防ぐため、観光事業者による多言語での正確な案内が重要です。

「入国前の接点」を観光マーケティングに活用する

日本版ESTAは、観光業界にとって新たな業務負担となる一方で、旅行者との接点が「日本到着後」から「出発前」へ広がるという大きな変化でもあります。
例えば、渡航前のタイミングに合わせて、地方への周遊モデルコースや季節ごとのイベント、交通情報、予約が必要な体験プログラムなどを発信できれば、旅行者の行動をより早い段階から後押しできます。
制度への対応を単なる義務として捉えるのではなく、「旅行前の体験価値」を高める機会として活用できるかどうかが、これからの観光マーケティングの差別化につながるでしょう。

まとめ

日本版ESTA(JESTA)は、入国管理を強化するための制度として注目されています。しかし、観光業界の視点で見ると、その本質は「旅行者との接点が出発前へ広がること」にあります。
旅行者にとっては新たな手続きが増える一方で、旅行会社や自治体、DMO、宿泊施設などにとっては、より早い段階から正確な情報を届け、安心して日本を訪れてもらうための新たな役割が求められます。
もちろん、制度の詳細については今後も見直しや変更が行われる可能性があります。そのため、現時点では最新の政府発表を確認しながら、情報発信や社内体制を少しずつ整えていくことが重要です。

インバウンド市場は、旅行先としての魅力だけでなく、「訪れやすさ」や「安心感」も競争力となる時代へと変化しています。
日本版ESTAへの対応は、単なる制度対応ではありません。旅行者が日本へ出発する前から信頼関係を築き、「また日本へ行きたい」と思ってもらうための新たなスタート地点として捉えることが、これからの観光業界に求められる視点ではないでしょうか。

※観光ONEでは、情報の提供を目的としており、公平性を心がけて執筆しています。
特定の国、地域、組織、政策、または個人を擁護したり、批判したりする意図は一切ありません。
また、記事内容に誤りや著作権などの侵害がある場合は、速やかに対応いたしますので、お問い合わせよりご連絡ください。

  • この記事を書いた人

上野 颯

観光イベント企画・添乗員

愛知県一宮市生まれ、岐阜市育ち
中学生で最年少の観光案内人としてデビュー。
旅行会社やIT企業での経験を経て、公立高校商業科(観光ビジネス)の講師や自治体への観光戦略の立案、ローカル鉄道の列車企画・ツアーの企画など、多岐にわたる活動を展開しています。

「観光の未来をもっと、おもしろく」をテーマに、観光業界で働く皆さまに〝若者目線〟も入れながら役立つ情報を発信しています。


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